2011 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉相互作用におけるThymosinβ10と4の機能解析と歯の再生への応用
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23792106
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 裕子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70380706)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯胚 / 発生・再生 / in situ hybridization / siRNA法 / 器官培養 / 間葉細胞 / 象牙芽細胞 / 分化 |
Research Abstract |
1)マウス歯胚発生過程におけるThymosin b10(Tb10)とThymosin b4 (Tb4) のmRNAの発現様式の検索を行った。その結果、Tb10とTb4は時期特異的に異なる発現パターンを示した。Tb10は主に間葉細胞、象牙芽細胞に発現を認め、特に前象牙芽細胞から分化期象牙芽細胞にかけて発現が強かった。一方で、Tb4は主に上皮細胞、エナメル芽細胞に強く発現を認めた。また、定量解析では両遺伝子ともに下顎においては、歯堤形成時期である胎齢12日(E12)、歯胚においては帽状期であるE15、基質形成期である生後1日齢(P1)で発現量が増加した。以上のことから、Tb10は象牙芽細胞分化に、Tb4はエナメル芽細胞分化に関与している可能性が推察された。2)歯髄細胞株mDPにsiRNAを応用しTb10とTb4発現抑制による象牙質分化マーカー発現への影響の検討を行った。その結果、象牙質基質タンパクであるDMP-1とDSPP、転写因子であるRunx-2の発現量減少が認められた。Tb10は象牙芽細胞の分化や基質形成に関与していることが示唆された。3)器官培養を用いたTb10の発現抑制による歯胚形成への影響の検討を行った。E11下顎の器官培養にsiRNAを応用しTb10の発現を抑制し8日間培養した結果は、コントロール群では歯胚が帽状期に達しているのに対し、Tb10抑制群では歯胚は蕾状期のままで形態形成が抑制されていた。E15歯胚を同様の方法で8日間培養した結果は、Tb10抑制群ではコントロール群と比較して間葉細胞が少なく、間葉組織と上皮組織を裏返したようなinside-outの形態を呈した。Tb10は、歯胚の形態形成に関与していることが示唆された。これらの結果より、歯胚の発生過程においてTb10は象牙芽細胞の分化や基質形成および歯胚の形態形成に必要不可欠な因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、歯胚発生過程におけるTb10の分子調節機構および機能を解析し、Tb4との比較検討を行い、Tb10とTb4が歯の上皮間葉相互作用および歯の形態形成にどのように関わっているか明らかにすることである。そのために、1)Tb10のmRNAの発現様式の検索を行い、2)歯髄細胞株mDPにおけるTb10発現抑制による象牙質分化マーカー発現への影響を検討し、3)器官培養を用いたTb10の発現抑制による歯胚形成への影響を検討した。これらの結果から、Tb10は象牙芽細胞の分化や基質形成および歯胚の形態形成に関与していることが示唆された。以上のように、歯胚発生過程におけるTb10の機能的役割について、確実に解明されつつある。また、現在それらのデータをまとめて論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定は、まずTb10の強制発現による象牙質分化マーカーの発現調節の解析を行う。次に、共培養系を用いてTb10を強制発現した歯原性間葉細胞とTb4を強制発現した歯原性上皮細胞を入れ培養し、DSPP, DMP1, Runx2/Cbfa1, Amelogenin, Ameloblastin, Enamelin, MMP-2, MMP-9, Type IVcollagen, laminin等の発現量の変化をRealtime PCRとWestern blottingにより定量解析を行い、Tb10とTb4における上皮間葉相互作用に関する機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究を遂行するために、分子生物学研究試薬、器官・細胞培養試薬、実験動物、組織標本作製試薬およびプラスティック器具等の消耗品費に使用する予定である。また、本研究の成果を国際誌に発表することを目指しており、その投稿料や校閲費に使用する予定である。さらに、国内学会での成果発表を考えており旅費に使用する予定である。下記に詳細を示す。分子生物学研究試薬 480千円 器官・細胞培養試薬 240千円 実験動物 80千円 組織標本作製試薬 20千円 プラスティック器具 20千円 校閲・投稿料 100千円 国内旅費 60千円
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 口唇部腫瘍
Author(s)
和田裕子
Organizer
第321回九州・沖縄スライドコンファレンス
Place of Presentation
福岡
Year and Date
2011年5月14日
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