2012 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉相互作用におけるThymosinβ10と4の機能解析と歯の再生への応用
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23792106
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 裕子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70380706)
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Keywords | 歯胚 / 発生・再生 / in situ hybridization / siRNA法 / 器官培養 / 間葉細胞 / 上皮細胞 / 分化 |
Research Abstract |
1)マウス歯冠形成期までにおけるThymosin beta 10 (Tb10) とThymosin beta 4 (Tb4) のmRNA発現局在の検索を行ってきたが、今年度はさらに、マウス歯根形成期から歯根完成期におけるそれぞれの因子の発現様式について詳細に比較検討した。その結果、Tb10 mRNAは前象牙芽細胞に発現しており、HERSとその周囲の間葉系細胞にも発現を認めた。一方、Tb4はエナメル芽細胞においてほぼ消失しており、それ以外の部分でも発現が認められなかった。 2)歯髄細胞株mDPにsiRNAを応用しTb10発現抑制による象牙質分化マーカー発現への影響を解析したが、それについて再度検討を行った。その結果、象牙質基質タンパクであるDMP-1とDSPPの発現に変化を認めなかったことから、Tb10は象牙芽細胞の分化に影響しないことが示唆された。また、歯原性上皮細胞株mDE6においてもsiRNAを応用し、Tb10発現抑制によるエナメル質分化マーカー発現への影響を検討した結果、エナメル質基質タンパクであるAmelogenin, Ameloblastin, Enamelinの発現に変化を認めず、Tb10はエナメル芽細胞の分化に影響しないことが示唆された。 3)器官培養下siRNAを応用しTb10発現抑制によるE11.0下顎およびE15.0歯胚の組織形態の変化を再度検討した。Tb10siRNAを応用し8日間培養したE11.0下顎において、エナメル器形成の抑制が有意に認められた。また、E15.0歯胚においては、間葉細胞が少なく、エナメル上皮の歯乳頭方向への伸長が認められず、歯冠形態は鍾状を呈していなかった。しかしながら、エナメル芽細胞や象牙芽細胞の分化はコントロール群と同様に認められた。 以上より、Tb10は歯胚発生過程において分化に影響せずに、増殖に影響する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、歯胚発生過程におけるTb10の分子調節機構および機能を解析し、Tb4との比較検討を行い、Tb10とTb4が歯の上皮間葉相互作用および歯の形態形成にどのように関わっているか明らかにすることである。 これまでに、1)マウス胎生10.5日から生後14日齢までの歯胚におけるTb10とTb4のmRNAの発現様式を詳細に比較検討した。また、2)歯髄細胞株mDPに加え、歯原性上皮細胞株mDE6においてもTb10発現抑制における歯原性分化マーカー発現への影響を検討した。さらに、3)器官培養下siRNAを応用したTb10発現抑制による歯胚形成への影響を検討した。 これらの結果から、Tb10は歯胚形成過程において時期および部位特異的に発現し、歯胚の発生・発育に関与する必須の因子であることが示唆された。 このように、歯胚発生過程におけるTb10の役割について確実に解明された内容について論文を投稿し、現在revise中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、器官培養下siRNAを応用したTb10発現抑制によるE11.0下顎およびE15.0歯胚の組織形態の影響が、増殖抑制によるものかアポトーシスによるものかを検討する目的で、器官培養にTb10siRNAを応用したE11.0下顎およびE15.0歯胚を用いて、Ki67免疫組織染色を行い、増殖活性について検討する。次に、TUNEL法を用いてTb10発現抑制による歯胚細胞のアポトーシスへの影響を調べる。さらに、Tb10機能抑制下におけるmDP細胞とmDE6細胞においても細胞増殖活性を調べ、Tb10が細胞増殖活性に関与しているかを確認する。 また、Tb10はG-actinと1:1で結合し複合体を形成してアクチンフィラメントの重合調節を行い、細胞分裂を制御し細胞増殖に関与する働きを担っていると言われている。そこで、Tb10発現抑制下でこのF-actinとG-actin量はどのような影響を受けるかについても検討したい。 さらに、Tb10を強制発現した細胞とTb4を強制発現した細胞を共培養し、上皮間葉相互作用に関する機能解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究を遂行するために、分子生物学研究試薬、器官・細胞培養試薬、実験動物、組織標本作製試薬およびプラスチック器具等の消耗品費に使用する予定である。また、本研究の成果を国際誌発表することを予定であり、その投稿料や校閲費に使用する予定である。さらに、国内学会での成果発表を考えており旅費に使用する予定である。下記に詳細を示す。 分子生物学研究試薬 480千円 器官・細胞培養試薬 240千円 組織標本作製試薬 40千円 プラスティック器具 30千円 実験動物 30千円 校閲・投稿料 120千円 国内旅費 60千円
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Research Products
(6 results)