2012 Fiscal Year Research-status Report
生体材料と成長因子の相互作用を応用した軟骨細胞無血清培地の開発
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23792273
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉林 くみ子 東京大学, 医学部附属病院, その他 (40586757)
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Keywords | 軟骨無血清培地 |
Research Abstract |
ヒト血清中成長因子および生体材料として用いられている、ヒト血清中の蛋白の細胞増殖における相互作用の分子メカニズムを検討した。 前年度に研究した血清組成評価に基ずく成長因子とアルブミン、コラーゲン、ヘパリン、ヒアルロン酸などの生体材料ならびにその組み合わせの模索および生体材料の添加方法の検討で得られた結果にもとづき、各因子と材料の細胞増殖効果への相互作用の分子メカニズムを解析した。増殖因子と生体材料と直接混和せず十分に相互作用をさせない方法および、十分に混和し相互作用させる方法での細胞増殖効果を比較した。具体的には上記両群において、成長因子FGF-2およびinsulinの培養液中の半減期をそれぞれFGF-2ELISA Kit、Insulin ELISA Kitを用いて測定するとともに、Western blotting を用いて細胞増殖シグナル(ERK, AKT,など)の活性化について、添加方法による違いを経時的に測定した。 さらに開発したヒト軟骨無血清培地を用いて各種細胞の増殖曲線の検討を行った。 弾性軟骨であるヒト耳介軟骨細胞の他に、膝関節軟骨(硝子軟骨)およびアストロサイト、ヒト線維芽細胞、気管上皮細胞、ケラチノサイト、hMSC、などについて、開発した無血清培地にて培養した際の経時時的な細胞増殖曲線を作成し、軟骨細胞と同様の増殖を示すかどうか検討した。方法としては、各種細胞を無血清培地にて7日間培養後、ヌクレオカウンターを用いて細胞数を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では昨年度までに、ヒト血清に含まれる成長因子を単独あるいは組み合わせで培地中に添加し、血清の代替として細胞増殖を促進することを試み、ついで、血清や細胞外基質に含まれる成長因子以外の因子として、各種有機成分、生体材料の併用を検討した。本年度は、それらの因子・材料の使用条件を最適化するため、因子・材料の相互作用を解析し、その作用機序を確認し、成長因子と生体材料の相互作用を応用した無血清培地を確立した。さらに、他の細胞への適合性や、同培地の再現性を検証した。 元来、血液中の成長因子は、一般にタンパク担体と結合しているのに対し、 培養液中の成長因子は遊離状態で存在していることが多く、培養ディッシュなどの壁面に容易に吸着されてしまう他、細胞表面にリガンドした後にも容易に脱離しやすく、増殖シグナル伝達を持続できない。したがって、増殖シグナルを増強し、その効果を維持することが細胞増殖用培地では重要であると考え、成長因子を生体材料に結合させ徐放化させることにより、持続的な作用を促すことを目指す。このような生体材料を導入し、また、成長因子が高濃度のうちに十分に混和し、相互作用させることにより、成長因子を安定化させ、かつ効果を増強し、細胞増殖を効率的に促進することを目指している。ELISAを用いて培養液中の成長因子濃度を測定したところ、本研究で開発した生体材料との相互作用を利用することにより、そうでない培養法では1/200程度までに濃度が減少したのに対し、持続的に濃度を保持することができ、成長因子の徐放化に成功したといえる。また、ウエスタンブロッティングにより、細胞増殖シグナルを持続的に活性化することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
無血清培地にて増殖培養した耳介軟骨細胞を用いた再生軟骨を作製し、in vitroおよびin vivoの実験系を用いて、再生軟骨組織の特性を組織学的、生化学的に評価することにより、無血清培地の有用性を検証する。無血清培地にてヒト耳介由来軟骨細胞を第3継代まで培養後、高密度(108 cells/ml)で1%アテロペプチドコラーゲンに包埋し、ペレット型軟骨細胞の遺伝子発現および蛋白蓄積量を評価する。Insulin、T3とBMP-2を含む再分化誘導培地により、1週間培養後、I型コラーゲンおよびII型コラーゲンの発現をreal time RT-PCR にて測定する。また3週間培養後、I型コラーゲン、II型コラーゲン、GAG蓄積量をELISAや比色定量法を用いて測定する。さらに、無血清培地で増殖培養した軟骨細胞をPLLA足場素材に播種し、再生軟骨組織の作製し、ヌードマウスへ移植する。移植後2週、2ヶ月、6ヶ月で再生軟骨を回収し、再生組織内の形状評価、組織学的・生化学的解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
具体的には無血清培地の有用性を検証するために、無血清培地にてヒト耳介由来軟骨細胞を第3継代まで培養後、高密度(108 cells/ml)で1%アテロペプチドコラーゲンに包埋し、ペレット型軟骨細胞の遺伝子発現および蛋白蓄積量を評価する。Insulin、T3とBMP-2を含む再分化誘導培地により、1週間培養後、I型コラーゲンおよびII型コラーゲンの発現をreal time RT-PCR にて測定する。また3週間培養後、I型コラーゲン、II型コラーゲン、GAG蓄積量をELISAや比色定量法を用いて測定する。さらに、無血清培地で増殖培養した軟骨細胞をPLLA足場素材に播種し、再生軟骨組織の作製し、ヌードマウスへ移植する。移植後2週、2ヶ月、6ヶ月で再生軟骨を回収し、再生組織内の形状評価、組織学的・生化学的解析を行うため、これらの実験に使用する試薬および機器に使用する。また、最新の研究の知見を得るために、学会およびセミナーなどの勉強会への参加などに必要な経費として使用する予定である。
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