2011 Fiscal Year Research-status Report
小児の食事動作の発達を運動計測から解明する新たな試み
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23792437
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
稲田 絵美 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30448568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 食事動作解析 |
Research Abstract |
小児の食事動作の発達過程を解明するためには、発達のゴールとなる健康成人の食事動作を解明する必要がある。そこで、平成23年度は先行研究として、成人の食事動作時の上肢、体幹、口腔、頭部の協調運動について解析を行った。その結果、成人はより大きい食物を口腔内に取り込もうとすると、その大きさに合わせて開口量が増加し、体幹もより前方へ傾斜する傾向があるものの、頭部は床に対する平行性を維持することで、安定性を保つ傾向があることが明らかになった。また、頭部の安定性を保つために、首部が後屈していることが分かった。本結果については国外雑誌に論文として投稿し、掲載された。 さらに、男女の食事動作の違いについて詳細を知るべく、その違いを解析したところ、男性に対し女性は、食品が大きくなると、最大開口時の頭部、肩部が下方よりも前方へ移動する傾向があり、さらに頭部の前方傾斜角度が有意に小さく、肩部に対する頭部の角度が大きかった。このことから、捕食の際、女性の方が前かがみになることなく、安定した頭位を維持している可能性が示唆された。 これまでも、開口量の増加と頭部の回転運動に関する研究は行われているが、いずれの報告も体幹の動きが制限された状態での計測であり、自然な食事動作時の各部位の協調性については明らかにされていなかった。 本先行研究で得られた結果は、今後小児の食事動作の発達過程を調べる上で、発達の最終段階を判断する指標となる重要なデータである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食事動作に関して身体各部位の動きを三次元的に定量解析した報告は皆無に等しく、観察による評価がなされているのみである。これまでの食事動作に関する観察的評価により、食事の一連の動作が a)頭部を前屈しながら視覚でスプーンと食物を認識し、その適量をすくう、b)スプーンのボール部が口唇中央にくるように手を動かす、c)口元に運ばれた食物を口唇の開閉口により的確に捕食する、d)スプーンを口唇から引き抜く、により営まれることが分かっている。そこで、本研究の達成目標は1)前述の食事に関する一連の動作を定量的に評価すること2)基本的機能獲得期に該当する時期において、年齢によりさらに細分化して、食事動作を定量解析することにより、変化の著しい小児期の食事動作の動態をより詳細に解明することである。平成23年度の研究では、上記目標1)がおおむね達成されてきていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究により、健康成人の食事動作に関する詳細が明らかになってきた。本年度は対象者を、食具を使った「食具食べ」が始まる1歳6か月児から、2歳児、2歳6か月児と、手づかみ食べが完全に終了する3歳児の各年齢群20名ずつ、計80名とし、成人の計測と同様、フォークを使ってりんごを捕食する際の上肢、体幹、口腔、頭部の協調運動について解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、研究の成果を国内外の歯科系、生体工学系の学会で発表するとともに、国際誌に投稿する予定である。よって、現状では食事動作の計測や解析に必要な備品や環境は整備がほぼ完了しているため、研究費は学会での成果発表に伴う旅費や論文校正および投稿料に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)