2011 Fiscal Year Research-status Report
新規エナメル基質蛋白会合分子を標的とした歯周組織再生のプロテオーム創薬
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23792480
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 医員 (80507781)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯周組織 / 再生 / プロテオーム / アメロジェニン |
Research Abstract |
現在、国内における厚労省が認可した唯一の歯周組織再生療法として、幼若豚の歯胚から抽出されたエナメル基質タンパク質:EMD (Emdogain® Gel) が利用されている。しかし、その作用機序についてシグナル伝達分子レベルでの統一的な見解は得られていない。本研究では、EMDの主要タンパク質であるアメロジェニンに注目して歯周組織再生に重要な細胞を用いたプロテオーム解析を行うことにより、新規アメロジェニン会合タンパク質の同定を行い、その会合タンパク質による歯周組織再生機序の可能性を検討している。 そこで申請者は胎生マウスcDNAからGST 融合アメロジェニンを作成し、アフィニティー樹脂(GST Pull-Down assay)を用いてアメロジェニンと会合したタンパク質の二次元電気泳動と検出を行った。そのスポットをMALDI-TOF (matrix assisted laser desorption/ ionization time of flight)で質量分析にかけ、データベース検索して新規アメロジェニン結合タンパク質を同定した。アメロジェニンとの会合は歯周組織再生に重要な骨芽細胞および歯根膜細胞の抽出液を用いて比較検討を行った。 SaOS-2骨芽細胞の細胞抽出液におけるアメロジェニン会合タンパクとして16spotの分析を行った結果、細胞骨格関連タンパク群(tubulin, myosin, vimentin,fillamin)およびGrp78,HSP70などが検出された。一方、歯根膜細胞の膜分画において9spotの分析を行い、hnRNP群およびnucleophosmin(B23)などが同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の計画として、アメロジェニン会合分子のプロテオーム解析による同定をあげていた。その結果、SaOS-2骨芽細胞抽出液および歯根膜細胞の膜分画においてアメロジェニン会合分子の同定まで行うことに成功している。SaOS-2骨芽細胞の細胞抽出液におけるアメロジェニン会合タンパクとして16spotから、細胞骨格関連タンパク群(tubulin, myosin, vimentin,fillamin)およびGrp78,HSP70などの同定を行った。また、歯根膜細胞の膜分画における9spotの分析から、hnRNP群およびnucleophosmin(B23)などが同定された 本研究におけるMALDI-TOF (matrix assisted laser desorption/ ionization time of flight)での質量分析は検出精度を重視し、外注での解析を依頼した。しかし資金的制約からすべてのspotの検出が困難であったため、すべての会合分子の網羅的解析には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
[アメロジェジンと新規会合タンパクの会合様式の検討]H23年度までの研究結果をもとに、新規に同定されたアメロジェニン会合分子について、以下の研究を予定している。1.in vitro 会合実験 : GST Pull-Down assayにより、His-tagのついた組換え会合タンパク質を作製してGST融合アメロジェニンとの結合を検証する。再確認後はアメロジェニンのN末のTRAP (tyrosine-rich amelogenin peptide) 中心部の疎水性の繰り返しモチーフやC末の親水性11アミノ酸長部位をそれぞれ欠失させたタンパク質を作製し、アメロジェニンのどの部位で会合タンパク質が結合しているのかを同定する。2.細胞内動態の確認:共焦点光学顕微鏡にて、蛍光標識したアメロジェニンの細胞内への取り込まれ方と、新規会合タンパク会合局在について検証を行う。 また、申請者はすでにアメロジェニン会合分子としてヒトY-Box蛋白であるYB-1を同定している。また、YB-1のknock out マウスは胎生致死であり、神経系の発育と細胞増殖に重要であることを共同研究者として報告しているが、YB-1 KO胎児マウスの頭蓋冠融合不全が確認されている。現在までに、アメロジェニン蛋白の精製とYB-1 siRNA knock down系の構築までおこなっており、骨芽細胞(SaOS-2)を用いて細胞増殖について検討したところ、YB-1蛋白のknock downにより細胞増殖が抑制されるが、アメロジェニン刺激により細胞増殖が回復することを確認しているこのアメロジェニン会合タンパクであるYB-1が歯周組織再生における役割を検討するため、YB-1 KO胎児マウスの骨・軟骨形成に注目して解析を行ってゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24-25年度は多種の細胞に対しての機能解析の検査項目が多岐にわたるため、抗体をはじめとする試薬に予算の重点化を計った。次年度の予定しているアメロジェニン会合分子の会合様式の実験は、in vitroであるため迅速な結果が求められる。いち早く世に成果を報告するには国内外の学会への参加や発表が重要であるため、毎年度ごとの学会発表にかかる旅費を計上している。H24年度はIADR国際歯科研究学会で、H23年度までのアメロジェニン会合分子のプロテオーム分析およびYB-1の骨形成における関与について、発表を予定している。
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