2011 Fiscal Year Research-status Report
苦痛症状のあるがん患者に対する緩和ケア評価におけるコンフォート指標の開発
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23792596
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
金正 貴美 香川大学, 医学部, 講師 (00335861)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | comfort |
Research Abstract |
苦痛のあるがん患者にとって、身体症状が緩和されComfortになることは重要な課題である。本研究の目的はがん患者のComfort指標を抽出することである。(方法)平成23年度は、国内外の医療を含め多領域におけるComfortの文献および書籍、例文を収集し、Comfortの文献レビューを行った。(結果)Holistic Comfortの概念を用いて行われた医療系研究170件において、Comfortは患者の状態やプロセスであるが、臨床での意味において看護ケアのoutcomeや看護の機能Comfort Careとしても用いられている。さらにComfortは人間の基本的ニードとしても用いられる。またComfortは名詞であり、動詞でもあるため、Comfortの使用は属性と意味において多様であった。Comfortの属性は(1)苦痛の軽減(2)心地よさ(3)満足(4)Well-being(5)喜び(6)安らか(7)関係での休らい(8)家族とのつながり(9)生活が保たれる(10)自尊心(11)安全であった。CiNii Articlesが所有しているComfortの概念を用いた論文(1998年~2011年)は1597件であった。そのうちComfortの概念について定義している論文40件において、Comfortは(1)快適性(2)心地よさ(3)慰め(4)暮らしやすさ(5)居心地の良さといった日本語訳の概念で使用されていた。Comfortの例文を、辞書や書籍より760件収集した。そのうちComfortが和訳されている用語、あるいは文章の意味より適切だと考えられる和訳を行った。Comfortは、(1)快適性(2)慰め(3)心地よい(4)気持ちよい(5)安楽(6)楽(7)安心(8)居心地の良い(9)満足(10)ほっとするであった。(考察)文献レビューよりComfortの特徴は、恒常性維持の働き、基本的ニードの充足、成長により記憶された心地よさ、環境との相互作用(take~, find~)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、国内外の医療を含め多領域におけるComfortの文献および書籍、例文を収集し、Comfortの文献レビューを行うことであった。研究実績の概要からも概ね順調に進展しているといえる。当初Comfortは介入により受け手が経験する状態であり、主観的な感覚と捉えていた。しかしComfortの文献を統合することによって、comfortが受け手といった消極的な状態だけではなく、積極的に快を得ようとする積極的な状態もあることが明らかになった。これはComfortが名詞だけではなく動詞としてComfortを得ようとする例文が多く見られたためである。次年度からの研究では、平成23年度の研究結果を踏まえて、Comfotの定義を広げて行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、データ収集、分析を行う予定である。サンプリングは平成23年度で明らかになったComfortの特徴(1)基本的ニードの充足、(2)成長により記憶された心地よさ、(3)環境との相互作用(take~, find~)から考える。各特徴で得られるComfortからそれぞれComfortレベルが高い低いと捉えられる集団を選出する。具体的には健康レベルの高低をも考慮し、がん患者のComfortと比較分析できるようにする。研究の進め方は、対象選定、データ収集、データ分析の段階がある。それぞれ研究者と緩和ケアチームとの協働により進める。対象者のインタビューおよび対象の表情、行動を捉える参加観察と看護師へのインタビューを組み合わせて、トライアンギュレーションの手法を用い、信頼性の高いデータ収集を行う。研究方法は質的帰納法(グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の予算で25万円本年度に繰り越している。これはホームページを作成するための予算であった。このホームページでは、がん患者の苦痛の軽減やComfortに関する文献概要について紹介し、Comfortを生活の中で育む方法について普及する目的がある。初年度では文献検討に概ね時間を割いたため、ホームページでの紹介は次年度以降の課題とした。平成24年度予算額は直接経費が70万円、間接経費が21万円である。文献費やICレコーダーなどの物品費が30万円、学会での情報収集、発表などの旅費が5万円、人件費・謝金を30万円、その他5万円で計画している。
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