2011 Fiscal Year Research-status Report
日本における精神障害からの「リカバリー」の包括的理解と支援のための実証的基礎研究
Project/Area Number |
23792706
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
心光 世津子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60432499)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | リカバリー / 精神科 / 精神障害者 / 看護師 |
Research Abstract |
本申請課題では、3年間をかけて、精神障害の当事者、家族、精神科医療にかかわる看護師それぞれの捉える「リカバリー」についてインタビュー調査により明らかにしていく。その1年目にあたる23年度では、(1)先行研究の検討および(2)調査準備を行った。(1)先行研究の検討 国内外のリカバリーに関する研究のレビューと比較を行った。諸外国においてはリカバリー運動の一翼を担う人びとによる調査回答やエッセイが多く、リカバリー運動にさほどコミットしていない当事者や看護スタッフを対象に研究として取り組んでいるものが少なかった。我が国においては当事者や看護師の捉えるリカバリーについての研究が極めて少なく、また論文の形で公刊されていないことが明らかとなった。さらに、日本の大半の先行研究ではリカバリーが調査者によって定義づけられて研究されており、対象者による定義を明らかにする必要性が改めて浮き彫りとなった。その一方で、リカバリー運動にあまりコミットしていない当事者や看護スタッフにとっては「リカバリー」そのものについて様々な見方が予想されインタビュー手法に注意が必要であると明らかとなった。なお、我が国における研究動向と課題については国際学会で報告を行った。また、海外文献のシステマティック・レビューについては、投稿を準備している段階である。(2)調査準備 文献検討に基づくインタビューガイドの再検討、調査協力候補者への打診と打ち合わせ、倫理委員会申請準備を行った。調査協力候補者については、複数の機関の看護師に研究計画を伝え、助言や協力の意向を得ることができた。倫理委員会への申請については、計画書、インタビューガイド等の準備を行い、調査実施地域の増加に伴う調整ができればいつでも申請のできる状態へと準備した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、1年目は、パイロットスタディを行いインタビュー方法やインタビューガイドの修正を行う予定であったが、研究者の平成24年度からの異動に伴い、当初計画していた以外の地域でも調査を実施すること及び他機関での倫理委員会審査申請を視野に入れて調査計画を検討する必要が出たという点において、平成23年度はやや遅れた状態であったと評価した。 ただし、平成23年度の調査準備の段階ですでに複数の調査協力候補者から協力に肯定的な反応を得ており、また、異動によって調査実施地域が増えることでさらにデータを充実させられることが期待でき、3年間の全体の研究計画としては大きな影響がないものと考える。平成24年度は次欄に述べる推進方策をとりながら調査を行っていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として次の4点が挙げられる。(1)研究協力者との協力関係の拡大・強化:円滑にインタビュー調査が行えるよう、近畿、関東地域を主に研究協力者とのさらなる関係の拡大・強化を行う。(2)新所属機関のネットワークの活用:平成24年度からの所属機関は精神医療における地域支援のネットワークが広く、これを活用し、情報収集や調査協力の依頼を行う。(3)速やかな新所属機関の倫理委員会審査申請:データ収集作業に入ることができるよう、調査協力者・機関の調整がつき次第、速やかに倫理委員会審査申請を行い、承認を得る。(4)分析の効率化:テープ起こし専門業者の活用、分析や文献管理を補助するソフトウェアの活用により分析を効率化する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、調査打ち合わせ、調査実施、分析を行うため、これらを円滑に進められるよう、以下の使用計画を立てている。(1)物品費:調査の進行・分析過程で調べる必要の出た文献およびデータ保存メディア、ソフトウェア、データ整理に用いる文具等を購入する予定であり、その購入代金を予算に計上した。(2)旅費:研究協力者との打ち合わせ、調査実施のための国内出張、および調査の途中経過を学会等で発表するための国内・海外出張のための旅費が必要であり、計上した。(3)謝金:資料整理のためのアルバイト謝金を計上している。(4)その他:調査時にインタビューと併用使用する調査票の印刷、学会報告時の参加費やポスター印刷、さらに国際誌への論文投稿時にはネイティブスピーカーによる英文校正等が必要となるため計上している。また、録音されたインタビューデータを逐語録に起こす作業を効率化するため業者に委託する予定であり、これにかかる予算を計上している。
|
Research Products
(2 results)