2011 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド線維末端の特異構造の解明に基づく線維伸長メカニズムの理解
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23870043
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
矢木 真穂 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特任助教 (40608999)
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Keywords | アミロイド / X線結晶構造解析 / 抗体 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
アミロイドβタンパク質(Aβ)は、βシート構造が規則正しく多数積み重なったアミロイド線維を形成して脳内に蓄積することにより、アルツハイマー病の発症を惹起すると考えられている。しかし、これまでに線維伸長を誘起する分子間相互作用の実体を分子構造論の観点から捉えた研究例はない。申請者は、アミロイド線維の"線維末端"に特異な柔構造が形成されているものと想定し、X線結晶構造解析法やNMR法などの構造化学的手法を用いて、Aβ線維の伸長末端における特異構造を原子レベルの分解能で解明することを目的とした。X結晶構造解析を実施することにより、非結晶性のアミロイド線維末端を可視化することが初めて可能になると期待される。 本年度は、動的でかつ不安定な過渡的中間体としての性質を有しているアミロイド線維末端の構造解析を行う上で必要な、アミロイド線維断片およびAβの線維末端に特異的に結合する抗体のデザインおよび作製に取り組んだ。抗体に関しては、大量発現系を確立することができた。一方、アミロイド線維断片に関しては、その最小モデルとして4~5分子のAβを遺伝子工学的に連結したタンデム型Aβを作製し、上記抗体によって認識されること、および、モノマーAβの線維形成を促進する核として機能することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アミロイド線維末端の構造解析を行う上で必要となる、アミロイド線維断片モデルおよびAβの線維末端に特異的に結合する抗体の調製を終えることができ、両者の複合体のX線結晶構造解析に向けての結晶化の条件検討にもすでに取り組むことができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
大型放射光施設を利用して、調製したアミロイド線維末端と抗体の複合体のX結晶構造解析を実施する。位相置換法による解析が困難な場合は、セレノメチオニン含有Aβを調製し、多波長異常分散を利用した位相決定を試みる。さらに、X線結晶構造解析より得られた立体構造の情報を活かし、化学修飾や変異を導入したタンデムリピートAβを作製することにより、in vitroでのより安定な末端構造の構築を目指す。そして、溶液NMR法を用いて、線維末端の特異構造が有する動的構造情報を抽出し、その特異構造の形成過程を明らかにすることを目指す。
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