2011 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤形成異常における酸化ストレスの与える影響の解析
Project/Area Number |
23890101
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
味村 和哉 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50437422)
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Keywords | 胎盤形成 / 前置胎盤 / 酸化ストレス / チオレドキシン |
Research Abstract |
正常な胎盤形成には、トロポブラストの脱落膜やらせん動脈への侵入、そして動脈壁のリモデリングを必要とする。妊娠高血圧症候群(PIH)胎盤において炎症細胞の活性化やToll-like Receptorの亢進が報告され、トロホブラストの侵入にも関与すると言われている。また、PIH胎盤において酸化ストレスマーカーであるThioredoxin(TRX)の発現が増加することも報告されている。一方、前置胎盤患者ではPIHの発症が胎盤位置正常の妊婦に比べて1/2以下と報告されている。今回、これらの分子に関して前置胎盤、特に癒着胎盤での発現解析を行った。妊娠30週以降で帝王切開分娩となった胎盤(対照群7例、PIH8例、前置胎盤7例、癒着胎盤6例)と胎盤床(対照群5例、癒着胎盤5例)を用いた。PIH群の血圧が高い以外は患者間の年齢や妊娠週数などに有意差はなかった。免疫染色法にてTRX、TLR4、TLR3、NK細胞のマーカーであるCD56、マクロファージのマーカーであるCD68、およびVEGFに関して発現程度の差を絨毛膜、絨毛、脱落膜、胎盤床ごとに比較した。TRXに関しては、PIH群でやや発現増加を認め、逆に前置胎盤・癒着胎盤では胎盤のどの部位にもほとんど発現が見られなかった。胎盤床においてはほとんど違いがなかった。TLR4や3に関してもPIHで発現が強く、前置胎盤や癒着胎盤で発現が見られない傾向があったが、全体的に発現が弱かった。CD56に関してはPIHの脱落膜で発現増加傾向を認め、癒着胎盤の胎盤床で発現減弱傾向を認めた。CD68やVEGFに関してほとんど違いは見られなかった。今回、前置胎盤・癒着胎盤でTRX発現減少を認めた。これは前置胎盤では酸化ストレスが減少しており、PIHが少なくなる病態を反映している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前置胎盤・癒着胎盤の患者検体はこれまで集積したものも含め今後の解析準備が十分可能な段階である。また、in vitroにおける実験では、ヒト絨毛癌のcell lineであるBeWo細胞およびマウス胎盤のトロポプラストを用いた培養系がすでに確立されており、in vivoにおけるチオレドキシン過剰発現のトランスジェニックマウスもすでに実験準備段階にあり、preliminaryなデータを出している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroにおける検討では、これまでの知見に基づいてBeWo細胞およびマウス胎盤のトロホブラストにおける低酸素・酸化ストレス環境下でのチオレドキシンの発現、およびトロホブラストの遊走/侵入(invasion/migration)および動脈への置換(replacement)に与える影響を検討するとともに、in vivoにおいて、チオレドキシンのトランスジェニックマウスを用いて、低酸素・酸化ストレス環境下における胎盤形成に与える影響を病理学的に解析する。さらに患者検体における検討では、DNAマイクロアレイ法によって胎盤形成異常に影響する遺伝子発現の差異を網羅的に解析するために前置胎盤・癒着胎盤/妊娠高血圧症候群/正常群の胎盤検体の集積を継続していく。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Silica and titanium dioxide nanoparticles cause pregnancy complications in mice2011
Author(s)
Yamashita K, Yoshioka Y, Higashisaka K, Mimura K, Morishita Y, Nozaki M,Yoshida T, Ogura T, Nabeshi H, Nagano K, Abe Y, Kamada H, Monobe Y, Imazawa T, Aoshima H, Shishido K, Kawai Y, Mayumi T, Tsunoda S, Itoh N, Yoshikawa T, Yanagihara I, Saito S, Tsutsum
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Journal Title
Nat Nanotechnol
Volume: 6(5)
Pages: 321-8
DOI
Peer Reviewed
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