2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the AMR stabilization mechanisms in developping countries
Project/Area Number |
23H00446
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山本 容正 岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 招へい教員 (20010100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 隆二 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (10332454)
田中 香お里 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 教授 (20242729)
山本 眞由美 岐阜大学, 保健管理センター, 教授 (40313879)
山口 貴弘 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (80553635)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | コリスチン耐性菌 / 途上国 / 食品 / 住民 |
Outline of Annual Research Achievements |
低・中所得国の農村地域住民間で広がる薬剤耐性菌は、地域の健康に大きな脅威をもたらします。この広がりのメカニズムは不明であるが、地理的・地域的な特徴が影響する可能性がある。本研究では、地域における耐性の蔓延とその安定化機序解明の一環として地理的・社会的に異なるベトナムとエクアドルの住民から分離されたコリスチン耐性大腸菌のゲノムを分析し、その拡散メカニズムの解明を試みた。エクアドルとベトナムの農村部住民それぞれ139人と98人の糞便検体を分析した結果、コリスチン耐性大腸菌の保有率は両国とも高く、エクアドルでは71.8%、ベトナムでは69.4%であった。系統樹分析では、耐性菌の遺伝子型は多様で、主要な型は国ごとに異なることが明らかとなった。コリスチン耐性遺伝子mcrの位置も異なり、染色体上に存在する割合はベトナムで35.1%、エクアドルで8.5%であった。mcrプラスミドのInc型も異なり、エクアドルではIncI2、ベトナムではIncX1/X4が優勢であった。これらの結果から、耐性菌の全体的なプロファイルは多様である一方、遺伝的系譜やmcrプラスミドには地域的な特徴があることが判明した。これら研究結果は論文にまとめ、PLOS ONEに発表した。一方、コリスチン耐性菌による小売肉の汚染がコリスチン耐性菌の地域蔓延に影響するであろうことは指摘されていたがその実態は不明であった。そこで本研究でベトナムの小売肉に含まれるコリスチン耐性遺伝子mcrの汚染状況を調べた結果、ベトナムの鶏肉の70.7%でmcr-1とmcr-3の両方が検出され、豚肉ではmcr-1が15.9%、mcr-3が40.9%の割合で検出された。これらの結果から、多くの小売肉がコリスチン耐性遺伝子の高い汚染を受けていることが明らかとなり、特にmcr-3の方がmcr-1よりも広く汚染している可能性事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの研究成果をまとめ、現在までに2本の論文を発表した。当初予定の計画は順調に進展しており、今後の更なる進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
住民より分離した耐性菌のゲノム解析による分子疫学的手法を用いた耐性の蔓延安定化機序解明を引き続き実施する。今まで得られた分離菌株のゲノム情報から薬剤耐性遺伝子保有状況の地域間での相違等を詳細に検討することが可能となったため、感染症治療上重要なキノロン耐性についても解析を試みる。キノロン耐性は主として染色体上のキノロン関連遺伝子の突然変異で生じることが知られており、ゲノム解析を行うことによりその詳細解析が可能である。
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