2023 Fiscal Year Research-status Report
イギリス児童文学黎明期の女性作家の形容詞と文体:コーパス文体論からのアプローチ
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23K00596
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
矢橋 知枝 仁愛大学, 人間学部, 教授 (10340035)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | イギリス児童文学 / 18世紀 / 女性作家 / 形容詞 / 文体論 / コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、研究課題初年度にあたるため、第一にイギリス児童文学黎明期の女性作家とその作品に関する社会文化的な文献調査を行い、第二に現代英語の観点より感情形容詞(affective adjectives)の文体的効果を論じる研究を行い、第三にHannah MoreのCheap Repository Tractsを中心とした史的コーパスの作成を開始した。 イギリス児童文学史において、最初の小説としてSarah FieldingのThe Governess (1749)が挙げられるものの、女性作家に焦点を当てて18世紀末までの流れに言及した文献が見つからなかった。そこで、後期近代英語期の大衆文学出版事情(Grenby & Immel 2009)を出発点とし、Townsend (1987)やDemers (2015)を含む複数の関連文献を精査した。また、適宜Encyclopaedia BritannicaやOxford Dictionary of National Biography Onlineなどを参照し、女性作家の社会的属性や作品の書誌情報をまとめあげた。この研究成果をまとめて国際学会で口頭発表を行い、査読付学会プロシーディングに論文が受理された。 現代英語における感情形容詞の研究では、映画の登場人物の音声言語(発話)における形容詞の文体的効果が指摘でき、論文として発表できた。 史的コーパス作成では、18世紀に人気を誇った大衆文学Chapbooksを意図的に真似たHannah MoreのCheap Repository Tractsを中心に据え、研究の基盤となるコーパス整備を開始し、現在も構築を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、イギリス児童文学の源流から18世紀末までに関する女性作家の社会文化的研究、Adamson (2000)に基づく現代英語における形容詞研究、パイロット分析を行うためのコーパス構築開始、を予定していた。 18世紀女性作家とその教訓小説に関し、一般的傾向としての圧倒的な教訓性・宗教性に加え、読者である子どもの興味・関心を惹くために凝らした工夫も指摘することができた。 今後の研究において重要であるAdamson (2000)に基づき、現代英語に関する形容詞分析を行うことで、登場人物の有する特性が言語化される過程を限定形容詞の観点から検証できた。 イギリス児童文学の発展に影響を与えたともされるHannah MoreのCheap Repository Tractsを中心としたコーパス構築開始により、次年度に予定しているパイロット分析の準備を始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度同様、イギリス児童文学黎明期・形容詞の文法化・コーパス文体論に関する最新の知見に触れるための文献調査を継続する。 史的コーパスを完成させる一方、コンコーダンスソフトを使用し、コーパス文体論の観点からの研究を進める。 感情形容詞(affective adjectives)の文法化を意味・語順変化より論じたAdamson (2000)を理論枠組の出発点とし、18世紀児童文学女性作家の教訓小説における形容詞の文法化に関する研究を進める。
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Causes of Carryover |
文献調査の際に使用する物品購入を当初予定していたが、現行のままでも不自由がなかったため、次年度予定している海外渡航に備えて購入を控えた。次年度は英国に赴き、研究課題遂行に不可欠な資料を収集する予定である。
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