2023 Fiscal Year Research-status Report
国家管轄権外区域の海洋生物多様性に関する新協定が海洋法秩序に及ぼす影響
Project/Area Number |
23K01108
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西本 健太郎 東北大学, 法学研究科, 教授 (50600227)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 国家管轄権外区域 / 海洋生物多様性 / BBNJ協定 / 国連海洋法条約 / 海洋法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2023年6月に採択された「国連海洋法条約の下の国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定)」が、国連海洋法条約を中心とする既存の海洋法秩序にどのような影響を有するものであるのかを検討するものである。BBNJ協定は、国連海洋法条約の文脈の中で、同条約と両立するような態様で解釈及び適用するものとされており(5条1項)、既存の海洋法秩序を修正することは必ずしも意図されていない。しかし、国連海洋法条約には規定のない内容や、一般的な規則しか定められていない内容を具体化するものであることから、既存の秩序の枠組みを修正するものではないにしても、相当の影響がありうる。 このようなBBNJ協定の影響を検討する方法として、本研究課題では、BBNJ協定の主要な要素がそれぞれ既存の海洋法秩序にとってどのような影響を持つものであるのかの各論的な検討から研究を開始した。初年度である本年度は、まず、採択された条文に基づいて協定の内容について詳細に検討した(本研究課題の直接の研究成果ではないが、研究成果が反映されているものとして、西本健太郎「国家管轄権海域外区域の海洋生物多様性に関する協定(BBNJ協定) 」法学教室520号(2024年)10-15頁がある)。その上で、第2に、海洋遺伝資源、区域型管理手段等の措置(海洋保護区)、能力構築・海洋技術移転および紛争解決手続のそれぞれについて、BBNJ協定が既存の海洋法秩序にもたらす影響を検討し、研究発表を行った。 現段階での検討結果としては、区域型管理手段等の措置(海洋保護区)について特に、協定が既存の法文書・枠組み・機関を損なってはならないとの規定が置かれているものの、既存の法秩序への影響は、解釈に幅がありうる関連規定の解釈と協定上の協力義務の内容がどのように理解されるかに左右されることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が研究対象としているBBNJ協定は、研究期間の開始直後の2023年6月に採択に至った。そこで本年度は、協定の全体について最終的に採択された条文を確認するとともに、海洋遺伝資源、海洋保護区を含む区域型管理手段等の措置および紛争解決手続について、既存の海洋法秩序との関係の検討を開始した。すでにこの検討に基づく研究報告を行うことができているほか、区域型管理手段(海洋保護区)と紛争解決手続については2024年度に公表予定となっている論文があり、進捗は順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、研究期間内に「国連海洋法条約の下の国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定)」の主要な要素について、国連海洋法条約の下での既存の海洋法秩序への影響を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
千円未満の残額が生じたため、研究遂行上より効率的な予算執行のために次年度使用額とすることにした。少額であるため、翌年度分として請求した助成金と併せて当初計画通り使用する予定である。
|