2023 Fiscal Year Research-status Report
アイデア開発者が自らの創造性発揮を動機づける過程と要件
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23K01650
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
磯野 誠 公立鳥取環境大学, 経営学部, 教授 (50550050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 善道 公立鳥取環境大学, 経営学部, 准教授 (50824447)
高橋 佳代 鹿児島大学, 法文教育学域臨床心理学系, 准教授 (90616468)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | アイデア開発 / 創造性 / 動機づけ / 自律性の感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アイデア開発において、いかにして開発者が、自身の価値観にもとづいて、すなわち統合的外発的に、自らの創造性発揮を動機づけようとしているのかを理解し(研究1)、そのことを可能とする要因を検討する(研究2)ことをその目的としている。そのために研究1では開発者を対象としたインタビュー調査をおこない仮説を導出する。研究2ではその仮説を実験により検討する。 初年度である今年度では、研究1の一環として、新製品アイデア開発研究、創造性研究、組織論における動機づけ研究・キャリア研究のレビューをおこなった上でリサーチクエスチョン(RQ)を設定、そのRQをもとに調査計画をたて、インタビュー調査を実施した。 これまでにデザイナー(インハウス、フリーランス)、マーケター、経営者、研究者など合計23人にインタビューをおこなった。来年度にはさらに数人にインタビューした上で、結果をまとめて考察を進める予定とする。 これまでのところ、次のような知見が暫定的に導かれた:開発者は自らの創造性発揮を動機づけるために、大きく次の2つの方略をとっている:①回避方略:組織の価値観から離れ、あくまでも自身の価値観にもとづこうとする;②組織の価値観を(無理矢理にでも)理解したうえでそれにもとづこうとする。 先行研究レビューの結果については、これまでのアイデア開発研究の知見とあわせて研究代表者・研究共同者による研究図書(ナカニシヤ出版)としてまとめた(「アイデアをもたらす思考」第3部「組織による創造性発揮と創造的認知」pp.111-191)。さらに「芸術工学会誌」90に「創造性と自律性の感覚」のタイトルで投稿した(2024年6月発行予定)(研究代表者)。またインタビュー調査の途中結果については、日本デザイン学会第4支部研究発表会にて、「創造性発揮のために自らを動機づけようとする開発者」のタイトルで報告した(研究代表者)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、開発者を対象としたインタビュー調査を主な活動とする研究1と、実験を主な活動とする研究2からなる。研究1は2023ー2024年度に、研究2は2025ー2027年度に実施する予定としている。上述の通り、初年度である本年度(2023年度)は、研究1の一環として、先行研究レビュー、リサーチクエスチョンの設定、調査計画の策定、インタビュー調査の実施を進めた。これはほぼ予定通りであり、来年度(2024年度)に予定する、調査結果のまとめ、考察、学会報告および論文化につなげることができる。 ただしこれから調査結果をもとに考察し、仮説を導出するが、その考察次第ではさらなる調査の追加が必要となるかもしれず、あるいは考察ができ実験に足る仮説が導出されたとしても論文化、その学術雑誌への投稿の結果の査読対応に問題が生じるかもしれず、進捗状況に決して余裕はなく、今後もできるだけ確実に進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本研究は、アイデア開発において、いかにして開発者が、自身の価値観にもとづいて、すなわち統合的外発的に、自らの創造性発揮を動機づけようとしているのかを理解し(研究1)、そのことを可能とする要因を検討する(研究2)ことをその目的としている。そのために研究1では開発者を対象としたインタビュー調査をおこない仮説を導出、研究2ではその仮説を実験により検討することを予定していた。 上述の通り、初年度である今年度(2023年度)で予定通り、研究1の一環として、先行研究レビュー、リサーチクエスチョンの設定、調査計画の策定、インタビュー調査の実施を進めた。来年度(2024年度)には、調査結果のまとめ、考察、学会報告(デザイン学会など)および論文化をおこなう。特に調査結果のまとめに際しては、質的データ分析支援ソフト(MAXQDA, kh-coderなど)を用いることににより、できるだけその客観性を確保するようにする。また必要に応じ、開発者インタビューを追加する。考察においては、研究2につなげるべく、仮説につながるような知見を導く。またここでは、研究者3人による研究結果のレビューと議論を深める。 2025年度以降はそれまでの研究1の結果、特に導出された開発者が自らの創造性発揮を動機づけることが可能となる要因についての仮説を受けて、その妥当性を検証すべく、研究2として実験を進める。最終年度となる2027年度にはその結果をまとめ、考察し、学会報告および論文化を進める予定とする。 上述の通り、研究1の流れ、特に追加インタビューの実施や論文化に時間がかかった場合には、研究2への移行が遅れる可能性がある。
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Causes of Carryover |
共同研究者である島田による物品支出が想定と異なり、0円であった。これは物品支出として見積もっていた文献購入費が、0円であったためである。本研究のための文献購入については、実際には所属大学から割り当てられる個人研究費から支出された。今年度未使用額は来年度に繰り越されるが、その分は、来年度の文献購入および旅費の予算に使用される予定とする。特に島田は来年度より他大学に所属することから、他の研究者との対面による研究ミーティングなどに際して、当初の想定以上の旅費が必要となる。
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