2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms of life-span personality development embedded in contexts of a personal life
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23K02890
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
白井 利明 大阪教育大学, 教育学部, 名誉教授 (00171033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 仁美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (10314345)
日潟 淳子 姫路大学, 教育学部, 教授 (20621121)
中村 知靖 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (30251614)
徳田 治子 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (40413596)
上田 裕美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80302636)
遠藤 利彦 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (90242106)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生涯発達 / アイデンティティ / 時間的展望 / ナラティブ / ライフストーリー / ダイナミックシステム / 時代性 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、31年間に及ぶ長期縦断研究に中年期のデータを追加することで、青年期から中年期のアイデンティティと時間的展望の生涯発達の筋道とメカニズムと多様性を明らかにする。本年度は、50代の定期的な面接調査と年1回の質問紙調査を行って縦断データを拡充するとともに探索的な分析をした。 第1に、生涯発達の筋道は、今回、実施した面接調査の50代の語りをこれまでの面接調査の語りに加えて、20代から50代の語りを分析した。その結果、20代から40代は、自分のしたいことと所属集団の求めるものとの間を調整し、それによってできた人生の見通しに導かれ、日々の生活に追われて、人生の流れができていくが、50代は、自分の人生状況の全体とその先が見えてきて、先送りしてきた課題がいずれ先送りできないことに気づき、人生を自覚的に生きることに直面していることが示唆された。 第2に、生涯発達の多様性は、アイデンティティの構成要素であるコミットメント・探求・危機の相互変化、そこに時間的展望がどのようにかかわるか、またそれらと20代から50代までの語りの変化との関連について、アイデンティティの螺旋発達モデル(Marcia, 2002; 岡本, 2007)と照合し、モデルが想定する(危機を経験し乗り越えて発達していく)事例とモデルから逸脱する(拡散ステイタスに留まり続ける)事例を比較した。その結果、前者は理論的に整合する変数間の相互関係が見られ、また人生の連続性と非連続性を構築する行動と語りが見られたが、後者は矛盾する傾向が見られた(白井, 2024)。 以上から、発達メカニズムとしては、自分が自分自身でいようとすること(Nuttin, 1980/1984, p.173)が想定されるが、その際、発達は未来に開かれたものであり、個人の抱える「終わらない人生の問い」をどう理解するかが鍵となると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、発達の節目ごとに行われる定期的な面接調査と年1回の質問紙調査を行って、縦断データを確実に蓄積し、中年期のデータを追加することで、青年期から中年期までの生涯発達データを得た。そして、その縦断データに基づき、質問紙調査の回答の数量的分析と面接調査の語りの質的分析およびそれらとアイデンティティの生涯発達理論との照合に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、引き続き、心理発達の全体性を捉える概念であるアイデンティティと時間的展望について、発達の節目ごとに行われる面接調査と毎年1回の質問紙調査を行って、中年期のデータを追加することで、生涯発達に関する縦断データを蓄積し、青年期から中年期のアイデンティティと時間的展望の生涯発達の筋道とメカニズムと多様性を明らかにする。分析の仕方は本年度と同様のものを行うことで、本年度に得たエビデンスをより確かなものにする。その際、個人の抱える「終わらない人生の問い」にアプローチするために、一人ひとりのその人固有の在り方という個別性の把握が際立つような個性記述的な分析方法について開発していく必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた面接調査の一部が研究参加者の都合によりできなかったため、次年度に予定している。
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