2023 Fiscal Year Research-status Report
Effect of light exposure to the taproot on the growth and component in carrots.
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23K05474
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
坂本 勝 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (90446378)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 塊根 / 光 / ニンジン / アントシアニン / サツマイモ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、光が当たらない植物の根において、『根部光照射装置を作成し、植物の根に光を当てつつ栽培する』ことでどのような現象が生じるか解明することである。根を可食部とする根菜類、特にニンジンを中心に実験を行っている。2023年度は、ニンジンにおいて根部照射装置の開発とそれを用いた青色LEDの照射などを行った。 根部照射装置は、おもに3種類の装置を試作して検討した。1つ目は、DFT水耕栽培を行い、水中に防水性のLEDを入れて根部に直接光を照射する装置である。この装置を用いて、試験的にレタス根にLED光を継続的に栽培したところ、培養液中に藻が大量発生する結果となった。今後実験を行っていくうえで、光照射の影響か、藻の影響かを区別することが出来ないため、次の方法を検討した。2つ目の方法は、DFT水耕栽培の上部にスペースを設けて、そこに側面からLEDを照射する方法である。培養液とは完全に独立させた気中で、肥大する塊根にLEDを照射すると、光による塊根色の変化が認められた。しかし、気中の湿度が低下していたため、乾燥して肥大が抑制される結果となった。そこで、次に3つ目の塊根湿度を維持する装置を作成した。DFT装置の栽培コンテナ内に塊根が生育する気中を設け、その空間を半密閉状態にすることで、高湿度状態にした。その結果、土壌中と同じような塊根肥大が誘導された。しかし、塊根周囲の細根がそのままの状態で残り、塊根との付け根の部分において色味が悪くなる現象がみられた。これは、塊根肥大初期に、塊根から伸びた細根を取りのぞくことで解消された。 次に、この装置を用いて、青色LED照射による影響を検討した。まだ、予備実験の段階ではあるが、塊根表皮が赤く着色し、アントシアニンの蓄積が生じたことが考えられた。 さらにこの装置と類似した装置を用いてサツマイモの塊根に光を照射する装置を作成し、影響の調査を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度年度は、研究計画のロードマップに示した①根部光照射装置の開発と②青色光照射が与える影響の調査の2つについて研究計画を立て、遂行した。①に関しては、3種類の根部光照射装置を作成して検討を行った。その結果、根圏環境を根の肥大に適した状態で光を照射でき、かつ藻の発生を抑制できるシステムの開発を行うことが出来た。以後の実験ではこの確立した装置を用いて実験を行う予定で、順調に実験が進捗しているといえる。 また、②青色光照射が与える影響の調査に関しては、2023年度と2024年度に渡って行う予定の実験である。2023年度は、試験的に青色光を照射して、根の表皮細胞が赤く色づくことを確認した。2024年度も継続してこの現象を含めた変化について照査していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に開発したニンジンの塊根への光照射装置を用いて実験を進めていく。まず、研究計画ロードマップの②青色光照射が与える影響について、2023年度に予備実験により確認した青色光照射によるニンジン塊根の赤色着色現象について、アントシアニンやフェノール類、カロテンなどの成分を測定し、光照射による変化を調査する。同時に塊根や地上部の生育の変化についても調査する。 また、③照射波長の違いが与える影響の調査についても研究を推進していく。照射波長としては、青色光のほかに緑色光と赤色光のLED照射を検討している。各種LEDを塊根に照射した後、その形態的な変化や塊根成分、地上部を含めた生育について調査する予定である。 さらに④エチレンシグナルの解析ということで、塊根光照射と塊根の成熟、それに関わることが期待されるエチレンシグナルについて解析する。本実験は2024年度から2025年度にかけて行う予定の実験で、まずは、エチレン阻害剤のSTSやAOA、エチレン前駆体の処理方法について検討する。培養液に薬剤を直接処理する方法や、ラノリンペーストを用いて直接塊根に薬剤を塗布する方法などを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、180万円で購入予定であったマイクロプレートリーダーを127万円で購入したことが、次年度使用額が生じた理由の一つである。ただし、『研究実績の概要』にあるように当初の実験計画から発展させて実験対象植物をニンジンのみではなくサツマイモも対象としたため、この実験に必要な経費が増加し、差額が4万円弱となった。2024年度もニンジンに加えてサツマイモにおいても予備的に根光照射実験を試みる予定で、そのための装置作成に差額分を利用する予定である。
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