2023 Fiscal Year Research-status Report
フォンタン循環症例の肺血管病変における血管外膜およびvasa vasorumの影響と治療応用
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23K07226
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
早渕 康信 徳島大学, 病院, 特任教授 (20403686)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フォンタン手術 / 肺動脈 / 肺血管病変 / vasa vasorum / 光干渉断層像 / 血管リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性心疾患症例の生命予後は診断の進歩や手術成績の向上によって大きく改善し、現在ではほとんどの症例が成人に達するようになった。重症度の高い複雑先天性心疾患にはフォンタン手術が施行されることが多いが、経年的に肺循環不全を呈し、心不全に陥ることが報告されている。フォンタン術後症例の中長期的な予後改善を実現するには良好な肺血管機能の維持が重要である。 フォンタン循環の肺血管病変に影響を与える因子としては術前の肺血流量減少や低酸素血症に加えて特徴的であるNon-pulsatileな非生理的循環の影響が関与していると考えられる。本研究ではフォンタン術後症例における肺血管リモデリング・血管機能異常に対する肺動脈外膜の微小血管 (vasa vasorum) 増生の影響に注目し、病態を解明することで肺血管リモデリングの発症予防と中長期的な予後改善に寄与する治療応用の開発を目的とした。 研究代表者はこれまでの研究において低酸素血症や肺血流量低下のような環境下では体肺側副血管が増生し、それに伴い肺動脈vasa vasorumが顕著に増生することを報告してきた。しかし、フォンタン循環の肺血管リモデリングに対する血管外膜の病理学的変化やvasa vasorumの増生の影響に関する検討や研究は報告されていない。研究代表者は経時的な病理組織学的な変化、肺血管機能の変化とvasa vasorum増生との関連性をフォンタン術後症例における臨床的な経時的観察研究で評価をすすめている。また、フォンタン循環類似動物実験モデルで研究を行っている。令和5年度にはフォンタン術後症例20例における肺血管のvasa vasorumの増生を VV area ratio (%)として、肺血管壁厚などを計測して循環動態との関連性をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では二つの研究項目を設定している。① 臨床症例を対照とした研究と② 動物実験による基礎研究である。臨床研究としては、小児期から成人期フォンタン術後症例(フォンタン群)と非フォンタンである心疾患症例(コントロール群)において心臓カテーテル検査施行時にOCT画像を用いた肺動脈の組織学的観察を予定している。さらに、肺血管機能計測・血管内皮機能評価、つまり、肺血管抵抗、肺動脈コンプライアンス、肺動脈容積、肺動脈拡張能、換気血流不均衡などの生理学的な肺動脈機能測定を施行する。OCT画像においては肺動脈内中膜壁厚、vasa vasorumの発達、血管コンプライアンスなどを測定する。もう一つの実験系はラットを用いた動物実験による研究である。フォンタン循環動物実験モデルの作成は非常に困難であるが、類似した病態と考えられる低酸素暴露ラットや肺血流低下を有する片側肺動脈絞扼ラットの肺血管病変をコントロールラットと比較して考察する。肺血管の病理組織学的検討、血管外膜およびvasa vasorum 周辺における血管内皮前駆細胞の動員、炎症細胞の動態、炎症性サイトカインなどの変化を観察することを計画している。血管内皮前駆細胞関連マーカーであるCD34、PECAM-1、CD133、Flk-1、Tie-1、マクロファージCD68, CD11c, CD206 などの染色をすすめている。さらに炎症性サイトカインであるIL-1β, IL-6, TNF-α,MCP-1 などの血管外膜における発現の増減を観察していくこととしている。現在の研究の状況としては、臨床症例検討が20例に留まっていること、基礎研究におけるラット肺血管病変の組織染色の研究が充分すすめられていないことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究としては、小児期および成人期フォンタン術後症例(フォンタン群)と非フォンタンである心疾患症例(コントロール群)において心臓カテーテル検査施行時にOCT画像を用いた肺動脈の組織学的観察を継続して行うことを予定している。肺血管機能計測・血管内皮機能評価、つまり、肺血管抵抗、肺動脈コンプライアンス、肺動脈容積、肺動脈拡張能、換気血流不均衡などの生理学的な肺動脈機能測定を施行する。さらに肺生検をする機会がある症例があれば肺血管組織所見を加えて検討を行う。フォンタン循環動物実験モデルの作成は非常に困難であるが、類似した病態と考えられる低酸素暴露ラットや肺血流低下を有する片側肺動脈絞扼ラットの肺血管病変をコントロールラットと比較して考察する。血管内皮前駆細胞関連マーカーであるCD34、PECAM-1、CD133、Flk-1、Tie-1などの染色、マクロファージに関してもCD68, CD11c, CD206 などの染色を行い、炎症性M1タイプ、抗炎症性M2 タイプに分類するなどして炎症所見の詳細な検討を行う。炎症性サイトカインであるIL-1β, IL-6, TNF-α, MCP-1 などの血管外膜における発現の増減を観察していくことなどを検討している。ラット肺血管病変の組織染色の研究については、早急に施行していき、測定と評価をすすめることができるように努めたい。
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[Journal Article] Use of the index of pulmonary vascular disease for predicting long-term outcome of pulmonary arterial hypertension associated with congenital heart disease.2023
Author(s)
Chida-Nagai A, Masaki N, Maeda K, Sasaki K, Sato H, Muneuchi J, Ochiai Y, Murayama H, Tahara M, Shiono A, Shinozuka A, Kono F, Machida D, Toyooka S, Sugimoto S, Nakamura K, Hayabuchi Y, et al.
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Journal Title
Front Cardiovasc Med.
Volume: 10
Pages: 1212882-1212882
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Analysis of coronary arterial aneurysm regression in patients with Kawasaki disease by aneurysm severity: Factors associated with regression2023
Author(s)
Kato T, Miura M, Kobayashi T, Kaneko T, Fukushima N, Suda K, Maeda J, Shimoyama S, Shiono J, Hirono K, Ikeda K, Sato S, Numano F, Mitani Y, Waki K, Ayusawa M, Fukazawa R, Hayabuchi Y, et al.
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Journal Title
J Am Heart Assoc.
Volume: 12
Pages: e022417-e022417
DOI
Peer Reviewed
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