2023 Fiscal Year Research-status Report
腟メタボロームの変化が子宮頸部腫瘍発生・進展に果たす役割
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23K08812
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
藤井 多久磨 藤田医科大学, 医学部, 教授 (10218969)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メタボローム / マイクロバイオーム / 子宮頸部腫瘍 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では子宮頸部腫瘍の進展、退縮に関連する腟内代謝産物の変化を解析し、その結果をその診断や治療へ応用するための前臨床的な研究を行っている。腟メタボロームはHPV感染、腟内マイクロバイオームやサイトカインプロファイル発現の変化にも連動すると予想される。そこで、我々はこれらを包括的に調べ、子宮頸部発がん機構の一端の解明をめざすとともに、一次代謝産物を標的とした子宮頸がんに対する補助的診断マーカーの開発およびあらたな治療戦略開発の基礎的な検討を開始した。本年度は298名(正常、および前がん病変、扁平上皮癌がそれぞれ、48,181,69名)の患者から採取した腟粘液検体を用い、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS/MS)を用いて一次代謝産物のROC曲線を描き、AUCを求めた。その結果、正常群に対し扁平上皮癌の検出精度はoxidized glutathione、malic acid、kynurenineでAUC はそれぞれ、0.924, 0.914, 0.884, 感度0.94, 0.91, 0.82特異度は0.77, 0.79, 0.83と高い精度で検出が可能であった。特に、oxidized glutathioneはCIN3と扁平上皮癌との鑑別に際し、AUC=0.904, 感度0.94, 特異度0.71と極めて高い数値を示した。次にvalidation cohortとして、正常、CIN3,扁平上皮癌(それぞれ、18, 22, 29名)の別集団で調べたところ、同様にoxidized glutathione、malic acid、kynurenineの精度は0.96, 0.81, 0.98と高い値を示すことがわかった。腟粘液検体を検査材料とし、一次代謝産物の代謝異常を指標とした解析手法は子宮頸部腫瘍の診断マーカーとして有用な可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3項目に分けて解析を行い現在のところ順調に進行している。 ① 子宮頸部腫瘍患者の腟メタボローム解析に基づいた補助診断マーカーの確立-正常と浸潤がん患者群を対象にしてPLS-DAスコアプロットを用い代謝傾向の違いを判別し、VIPスコアにて代謝経路に含まれる一次代謝産物を同定した。次に浸潤がん(N=69)で代謝が正常(n=49)に比べて2倍以上かつ有意に(p<0.05)亢進している一次代謝産物をVolcano Plot解析したところ、oxidized glutathione, malic acid, kynurenineが診断マーカーとして有用な可能性が示唆された。 ② 子宮頸部腫瘍患者に特異的に亢進している代謝経路の解析-MetaboAnalyst5.0を用い特に前がん病変から浸潤がんに至るまで一貫して変化する代謝経路が同定できれば腫瘍発生機構の本態に迫れると期待して現在順調に解析を行っている。 ③ 腟メタボローム、マイクロバイオーム、サイトカインプロファイルおよびHPV型判定を用いた統合解析による子宮頸部発がん機構の解明-腟粘液はメタボローム解析だけでなくマイクロバイオームとサイトカインプロファイルおよびHPV型判定との統合解析が可能であり、HPV型判定は共同研究として国立感染症研究センターに検体を送付、網羅的なHPVハイリスク型(計31種類)の解析を実施している。これらの情報の統合解析を行い、相互に影響を与える因子の同定を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
腟粘液検体採取時にメタボローム解析用とマイクロバイオーム用検体およびサイトカインプロファイル用とHPV型判定用の検体採取も同時に行っている。それぞれ別の解析を統合する必要があり、すべての結果が出たあとにデータを統合して再解析を行う必要がある。個々のデータ解析はほぼ終了しているが、統合解析はこれからであることから、一定の時間がかかることが予想される。特にメタボロームとマイクロバイオームとの統合解析においては文献調査も交えながら、その臨床的な有用性について考察を経て解析を進めていく必要がある。海外の研究者との情報交換も必要と感じており、2023年度はEUROGINに参加するなど国際学会への積極的な参加と発表も重要なステップと考えており、2024年度も国際学会に参加を予定している。
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Causes of Carryover |
2024年3月開催の学会参加にあたり当費目にて出張したが、詳細な旅費の算定が年度末までに確定できず次年度使用額が発生した。 翌年度分として請求した助成金の物品費と合算する予定であるが、金額は高額ではないため、大勢にに変更はない。
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