2023 Fiscal Year Research-status Report
長期大規模コホート研究による小児眼構造・視機能の発達と眼疾患発症因子と対策の検討
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23K09003
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柏木 賢治 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30194723)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 視機能発達 / 眼軸 / 屈折 / 網膜 / 視神経 / 隅角 / 全身因子 / 環境因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの眼疾患は短期に発症するのではなく出生前もしくは成長期からの長年の影響があると考えられている。また発症には眼所見のみならず全身所見も関係が深いと考えられている。このため長期にわたる目を含めた全身状態の前向き観察が病態解明に重要となる。この観点から、研究者は子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の追加調査として眼科領域では唯一長期間検討を行っている。今回の研究期間において以下の点について明らかにした。①8歳児の屈折障害の発生頻度と危険因子を検討し、8歳児の30%程度が裸眼視力が1.0未満であり、屈折障害には両親の屈折異常の有無と関連のあること。②眼球の成長においては男児の方が女児より長眼軸を有しており、これは身長の補正を行っても残存することから、眼球の発達には体格とは別に性差が存在すること。③網膜や脈絡膜の構造解析を行い、さらに視神経乳頭の構造とこれに関連する因子を解析した。この結果、網膜の構造と眼軸や屈折障害には部位による差が存在することを示した。④隅角の発達の調査と関連する因子の検討し、眼軸や屈折障害と隅角構造に差があること、隅角構造の形成にも性差が存在することを示した。⑤2019-2023年の5年間の屈折異常や眼軸長の変化と生活習慣の関連性を検討した。この結果新型コロナの隆盛期には屈折障害が近視寄りになっていることが判明した。 これらの研究を通じて、これまで明確になっていない、屈折障害の実情、眼球構造の変化について横断的、かつ縦断的検討を行った。 本研究は現在進行中であり、今後はさらに縦断研究を同一個体ならびに集団を対象として進めるとともに、眼球の構造や機能に関連する生活習慣因子、骨格構造、ホルモン、遺伝子、全身の神経発達などの幅広い分野において検討するために継続的に検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本事業は2010年から開始されており、現状では少なくとも2027年まで継続する予定である。全国調査においては約10万人が参加している。この内、眼科検査は追加調査として4000名を対象に研究者が進めている。参加者の脱落は少なく、検討項目も当初計画よりも機器の導入などにより広範囲となっており計画よりも多くの成果が見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において眼科の研究は2019年から開始している。同一対象者は4年ごとの健診を受ける計画のため最初の健診は8歳児に対する横断研究であったが、2024年から最初の健診対象者が12歳となるため、4年間の前向き検討が可能となる。 さらに、全身状態のデータとの解析を更に進める予定である。これらの成果から眼組織や視機能の発達の関連因子を眼組織のみならず全身的要因、環境要因も併せてより詳細に検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初人件費として予定していた金額に対して研究計画の変更によって実際には使用しなかったものが存在した。本年度未施行であった研究計画については、次年度に施行予定となっているため、次年度に使用する予定である。
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Research Products
(13 results)