2023 Fiscal Year Research-status Report
成体延髄神経幹細胞ニッチに着目した摂食抑制メカニズムの解明
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23K14280
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
古部 瑛莉子 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30845566)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 最後野 / 成体神経幹細胞 / 神経新生 / グリア新生 / 高脂肪食 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
最後野、孤束核および迷走神経核は、背側迷走神経複合体の一部を形成することが知られており、食物摂取を阻害する内臓神経線維の情報と摂食ホルモンによる情報を統合する領域である。さらに、最後野および延髄中心管上衣細胞には成体でも細胞新生が生じていることが分かっており、神経幹細胞(NSCs)が存在している。しかし、最後野/中心管のNSCsについての特徴や機能は未だ明らかとなっていない。本研究ではマウスに高脂肪食(HFD)を短期間(1週間)または長期間(4週間)摂食させ、最後野/中心管に存在するNSCsや前駆細胞の増殖に与える影響について、BrdUを用いて増殖細胞を検出し検討した。その結果、最後野NSCsは短期間のHFDによりで細胞増殖が活性化されるのに対して、中心管に存在するNSCsは長期間のHFDにより活性化されることが示唆された。さらに、神経前駆細胞およびオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖を検討したところ、短期間のHFDはこれら前駆細胞の増殖を活性化することが判明した。一方で、長期間のHFDでは前駆細胞の増殖はコントロールレベルに戻っていた。HFDは末梢および中枢神経系での炎症を引き起こすことが分かっているため、延髄領域における炎症状態を知るため、アストロサイト密度およびミクログリア密度を調べたところ、孤束核および迷走神経核では特に長期間のHFDで両者の密度の増加が生じていた。さらに、ミクログリアの炎症性活性化マーカーであるiNOSを用いた免疫染色により、長期間のHFDが孤束核および迷走神経核でのiNOS陽性ミクログリアを増加させることを明らかとした。本研究結果から、最後野NSCsおよび前駆細胞が摂食またはエネルギー代謝の制御に関わる可能性が示唆された。また、HFDは特に長期にわたると延髄でも炎症状態を誘導し、この炎症がNSCsや前駆細胞の増殖に影響を与えている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度から引き続き、延髄における成体神経幹細胞および前駆細胞の高脂肪食摂取による影響を検討し、さらに炎症にも着目して研究を行った。摂食ホルモンの影響だけでなく、炎症の影響も受けていることを示唆するデータを得ることができ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主に以下の内容について検討を行う予定である。 ・短期間の高脂肪食により増殖を行った神経前駆細胞がどのような運命をたどるのか ・神経新生の意義の解明 ・短期間の高脂肪食により増殖を行ったアストロサイトやオリゴデンドロサイトの役割の検討
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Causes of Carryover |
昨年度に購入予定の抗体の使用量が条件検討により少なく済むことが判明し、購入量を削減できたため。繰り越した分の金額は定量の精度を上げるため、炎症性タンパク質検出KITの追加の購入に充てる予定である。
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