2023 Fiscal Year Research-status Report
新型コロナウイルス変異株の形質予測・進化予測手法の開発
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23K14526
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 潤平 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (20835540)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス / 機械学習 / タンパク質言語モデル / ウイルス進化予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス感染症の制御が難しい要因の一つは、ウイルスが変異を獲得することで進化し、性質を変化させることにある。実際COVID-19パンデミックにおいては、免疫逃避能を上昇させ伝播力(適応度)を上昇させたSARS-CoV-2変異株が相次ぎ出現したことで、流行の制御が困難となった。ゲノムデータの豊富なSARS-CoV-2をモデルとし、ウイルスがどのように適応度を上昇させるのかを解明することで、将来のパンデミックを含めた様々な感染症の制御に向けた知見を得られると期待される。 本年度は、本研究課題では、SARS-CoV-2変異株の適応度をスパイク(S)タンパク質配列に基づき予測する機械学習モデルCoVFitの開発に取り組んだ。具体的には、タンパク質言語モデルESM-2(Lin et al., 2023, Science)を、i) SARS-CoV-2を含む様々なコロナウイルスのSタンパク質配列情報、ii) ウイルスゲノム疫学調査データから推定されたSARS-CoV-2変異株の適応度情報、そして、iii) 実験により網羅的に計測された変異の免疫逃避能に対する機能情報を用いて訓練することで、予測性能の高いモデルを開発した。 本研究では、開発したCoVFitを用いるとウイルスの適応度上昇の遺伝学的基盤を明らかにした。本研究は、ウイルスの流行と法則の法則についての興味深い洞察を提供するだけでなく、ウイルスゲノム疫学調査に変革しうる新たなツールを提供するものである。本研究成果は、ウイルス進化・流行予測に基づくワクチン株の選定など、より効率的なワクチン開発戦略の創出に貢献できる可能性がある。 研究成果のプレプリントとしてbioRxiv上で既に公開済みであり、現在国際科学誌に論文投稿中(査読中)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の要である「ウイルス適応度予測モデル」の開発は既に完了し、現在論文投稿中(査読中)であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスは適応度を上昇する方向に進化する傾向がある。次年度は、開発した「ウイルス適応度予測モデル」に基づくウイルス進化シミュレータを開発することで、SARS-CoV-2の進化を予測する手法を開発する。
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Causes of Carryover |
購入、使用予定だった大型計算リソースの使用時期が、予定していた2023年度から2024年度にずれ込んだため。 大型計算リソースは、ウイルス進化の大規模なシミュレーションを行うために2024年度に購入、使用する。
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Research Products
(17 results)