2023 Fiscal Year Research-status Report
脳領域間の情報伝達機構の異常に着目した術後せん妄の発症機序の解明
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23K15583
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
志田 恭子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 術後せん妄 / 前頭前皮質 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
「術後せん妄(POD)」は、死亡率増加、医療費増加、患者の生活の質の低下などが懸念されているが、発症機序は解明されておらず、予防に努めるしかないのが現状である。前頭前皮質と海馬は記憶に重要な脳領域だが、PODにも関与している。しかし、脳領域間の情報伝達機構は不明で発症機序は明らかではない。そこで、PODに関与する脳領域間の機能的な繋がりや神経細胞集団活動の変化から、発症機序の解明ができるのではないかと着想した。本研究から、発症機序に基づいた予防・治療法が提案できる可能性がある。 今年度は、PODモデルマウスの作成を行った。C57BL/6Jマウスに吸入麻酔薬(イソフルラン)を1MAC、2時間吸入させ、試験開腹術を行い、2日後の新規物体認識試験で、短期記憶障害(新規物体認識試験で獲得試行とテスト試行の間隔を10分間として確認)を認めなかった。予備研究で実施していた麻酔器が老朽化したため、新しいものを使用して麻酔を行ったことが関係していると考えられた。このため、麻酔濃度、時間、手術の術式などを変更し、短期記憶障害が起こる条件を再検討している。 なお、今年度予定していた高密度外点電極による脳波の測定は、研究協力者の異動のため、次年度に実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
麻酔・手術の条件の再設定のため、PODモデルマウスの確立に時間がかかっている。また、高密度多点電極による脳波測定を次年度に変更したため、進捗に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、PODモデルマウスの作成条件設定を行うが、難しい場合は既に研究室で確立している術後神経認知機能障害(POCD)モデルにおける、脳領域間の相互作用の解析に変更して実施する。 また、次年度には高密度多点電極を実施するが、並行してより簡便な方法である遺伝子組み換えマウスのThy1-GCaMP6マウスを導入する。このマウスに麻酔・手術を行い、術後の海馬の神経細胞の集団的活性化について、コントロール群と比較する。これにより、術後の短期記憶にかかわる海馬の神経活動の変化を確認できる。
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Causes of Carryover |
高密度多点電極に必要な高額なシリコンプローブ等の購入を次年度に繰り越した。 今年度は、引き続きPODモデルの確立を行い、遺伝子組み換えマウスも導入するため、その費用が必要である。
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