2023 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋Nrf2による脂肪性肝炎防御機構の解明:臓器間の抗酸化因子伝達に着目して
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23K19944
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
三浦 征 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (20982317)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 脂肪性肝炎 / 筋-肝連関 / 酸化ストレス / Nrf2 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満者に随伴する骨格筋の酸化ストレス障害は,骨格筋の機能障害を引き起こし,脂肪性肝炎の病態を増悪させる (筋-肝連関).転写因子Nrf2は生体の酸化ストレス防御の司令塔として知られており,骨格筋の量や機能の維持に寄与していることが示唆されている.脂肪性肝炎における骨格筋Nrf2の機能を解析するため,全身Nrf2欠損マウスをベースに,筋細胞特異的にNrf2を発現する筋細胞得意的Nrf2遺伝子レスキューマウスを作製したところ,興味深いことに,食餌誘導性の脂肪性肝炎が抑制される表現型を示した.これより,筋細胞のNrf2が脂肪性肝炎の防御に寄与していることが確認された.本研究では,骨格筋から肝臓への抗酸化因子の伝達に着目して,筋細胞Nrf2による脂肪性肝炎の抑制メカニズムを検証する.本年度は以下の実験を実施した. 1. 全身Nrf2欠損マウスおよび筋細胞特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスの血中細胞外小胞 (EVs) のプロテオーム解析:食餌誘導性に脂肪性肝炎を誘導した両マウスの血清から細胞外小胞を抽出し,内包タンパク質の網羅的解析を行った.筋細胞特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスの血中EVsには抗炎症作用を有する分子が内包されていることが確認できた.今後は,本実験で抽出した候補タンパク質の機能に着目し,骨格筋Nrf2による脂肪性肝炎の抑制を媒介する因子の同定を目指す. 2. 培養筋管細胞におけるNrf2活性化誘導の条件検討:培養筋管細胞 (C2C12) にNrf2活性化剤(Sulforapahne)を添加し, Nrf2下流の抗酸化分子の発現量を解析することでNrf2活性化が誘導される条件を検討した.複数の濃度およびインキュベーション時間を検討し,至適条件を確認できた.Nrf2活性を誘導した筋細胞の細胞由来のEVsを用いて,解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋Nrf2による脂肪性肝炎の抑制を媒介する可能性がある候補タンパク質を絞り込むことができた.次年度は,抽出したタンパク質について,肝炎症を抑制する可能性を検証する.また,細胞実験で必須である筋細胞由来EVsを精製するための条件を確立することができた.今後は,このEVsが抗炎症効果を発揮するか,細胞実験にて検証する.細胞実験に必要な設備等も今年度中に確立することができたため,速やかに実験を開始することができる.次年度は今年度の研究成果を基盤に当初予定していた実験を遂行する計画である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施したプロテオーム解析の結果に基づいて,Nrf2活性化を誘導した筋細胞由来のEVs中に候補タンパク質が内包されているかを解析し,骨格筋Nrf2による脂肪性肝炎の抑制を媒介する因子の更なる絞り込みを行う.また,LPS添加により炎症を誘導したマクロファージ(RAW264.7)または肝細胞(Hepa1-6)に対して,筋細胞由来EVsを添加し,炎症が抑制されるか検証する.これらの実験を通して,Nrf2制御下で筋細胞から肝臓へと抗酸化・抗炎症分子が伝達され,脂肪性肝炎を抑制している可能性を検証する.また,細胞実験にて,筋細胞由来EVsの抗酸化ストレス・抗炎症作用が確認された場合は,食餌誘導性に脂肪性肝炎を誘導したマウスに対するEVsの投与実験を行い,In vivoレベルでの検証を行う計画である.
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