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2023 Fiscal Year Annual Research Report

16、17世紀のスペイン複合国家における公共善をめぐる多元的ダイナミズム研究

Research Project

Project/Area Number 20H01337
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionSophia University

Principal Investigator

内村 俊太  上智大学, 外国語学部, 教授 (90710848)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 立石 博高  東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (00137027)
高澤 紀恵  法政大学, 文学部, 教授 (80187947)
宮崎 和夫  筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40251318)
久木 正雄  法政大学, 国際文化学部, 准教授 (20846737)
Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywords複合君主政 / 複合国家 / 公共善 / 近世国家
Outline of Annual Research Achievements

2023年度の研究実績としては、本研究組織の参加者が各分担におけるフィールドでの個別研究を進める一方で、出版物をつうじて本研究に関連する成果を公にした。
高澤紀恵(研究分担者)・竹下和亮(研究協力者)が編集・執筆・翻訳に関わった高澤紀恵、ギヨーム・カレ編『「身分」を交差させる―日本とフランスの近世』(東京大学出版会、2023年)の公刊によって、フランスと日本の近世国家・社会を成り立たせていた「身分」の具体的な意味内容の解明が進められ、近世のスペインとフランスを比較する本研究にとっても重要な知見が学界に共有された。
また立石博高(研究分担者)・竹下和亮(研究協力者)の共訳によるクリシャン・クマー『帝国―その世界史的考察』(岩波書店、2024年)では、歴史社会学の観点から古代から現代にかけての世界史の底流としての帝国の位置づけが示されることによって、帝国論・国民国家論を前提としてヨーロッパ近世国家としてのスペイン・フランスを分析する本研究にとって不可欠となるパースペクティブが共有された。
個別研究としては内村俊太(研究代表者)が、アメリカ植民地も含むスペイン近世国家にとっての政教関係を18世紀も視野に入れて研究ノートとして整理する一方で、スペインにおける現地史料調査(トレード大聖堂文書館等)を行って、カスティーリャ王国としての在地社会における公共善のあり方に関する実証研究の進展を図った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2023年度までの本研究はおおむね順調に推移していると判断できる。
2023年度は前述のように高澤紀恵、ギヨーム・カレ編『「身分」を交差させる―日本とフランスの近世』とクリシャン・クマー(立石博高・竹下和亮訳)『帝国―その世界史的考察』が公刊されたことで、比較史的または巨視的な視点からの近世国家研究において学界に対する貢献がなされた。本研究は、ヨーロッパ近世史学における複合国家論・複合君主政論を前提とし、16、17世紀のスペイン近世国家を構成した諸地域における王権・特権身分層・民衆層が公共善をめぐって形成するダイナミズムを考察対象とするが、前記の『帝国』は歴史社会学的な視点から通時的に帝国論を再検討することで、近世的グローバル化のなかで広域支配を実現したスペイン近世国家の分析に大きく資する。また、近世の社会構成原理としての身分についてフランスと日本の事例に即して研究状況を深化させた『「身分」を交差させる』は、スペイン近世国家を構成する各地域それぞれに固有な身分のあり方、またそれを前提とする公共善のあり方を考察するためにも、重要な比較材料を提供する。
その一方で、本研究がスタートした2020年度から始まった新型コロナウイルスのパンデミックの影響が減衰したことで、現地での史料調査も本格的に再開することが可能になった。2022年度にも既に他予算を活用して内村俊太がスペインでの現地史料調査を再開していたが、2023年度も本科研費によってスペインでの調査(トレード大聖堂参事会文書館を中心とする)を続行した。トレードは、スペイン近世国家のなかで中心的な位置にあったカスティーリャ王国の在地社会のモデルケースであると同時に、最大の大司教座であるためカトリック君主国を統治する王権と教会権力の関係性を考察するために、聖堂参事会が作成した各種史料を調査することで具体的な知見を得た。

Strategy for Future Research Activity

2024年度は本研究の最終年度となる。したがって、一方では引き続き個別研究のための文献調査・史料調査を深めつつ、他方では研究組織の各メンバーの分担にもとづく個別研究の成果を研究組織としてとりまとめる段階に入る。
前述のように本研究は、16~17世紀のスペイン近世国家を複合国家論・複合君主政論にもとづいて近世ヨーロッパにおける複合国家の典型例として捉えることを出発点として、各地域において固有の法と政体を中世から形成してきた地域国家の特権身分層と、複合国家全体を統治するハプスブルク王権との関係性を軸の1つとして近世国家のメカニズムを考察する。さらにもう1つの軸として、複合国家論・複合君主政論では後景に退きがちであった各地域の民衆層の動向を公共善をめぐる緊張関係の観点から加味することで、王権・特権身分層・民衆層の三者関係によるダイナミズムを近世的複合国家を成り立たせていた、あるいはそれを解体させうる契機として考察する可能性を検討する。
そのために2024年度には複数回の定例研究会を実施しながら、研究組織メンバーによる個別研究の進展について共有したうえで、スペイン近世国家のメカニズム理解に資する研究成果の発表に向けての準備を加速する。

  • Research Products

    (6 results)

All 2024 2023

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] 「近世スペインの政教関係に関する予備的考察」2024

    • Author(s)
      内村俊太
    • Journal Title

      『上智ヨーロッパ研究』

      Volume: 15 Pages: 127-137

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 「書評 上村忠男『歴史をどう書くか』」2024

    • Author(s)
      竹下和亮
    • Journal Title

      『週刊読書人』

      Volume: 3月29日号 Pages: 4面

  • [Journal Article] 「回顧と展望 南欧」2023

    • Author(s)
      内村俊太
    • Journal Title

      『史学雑誌』

      Volume: 132-5 Pages: 368-371

  • [Presentation] カタルーニャ自治州と「民族自決レファレンダム」2024

    • Author(s)
      立石博高
    • Organizer
      史学会例会「近現代西洋における領域の帰属とレファレンダム」
  • [Book] 『帝国 その世界史的考察』2024

    • Author(s)
      クリシャン・クマー(立石博高・竹下和亮訳)
    • Total Pages
      308
    • Publisher
      岩波書店
    • ISBN
      9784000240673
  • [Book] 『「身分」を交差させる 日本とフランスの近世』2023

    • Author(s)
      高澤 紀恵、ギヨーム・カレ編
    • Total Pages
      400
    • Publisher
      東京大学出版会
    • ISBN
      978-4-13-020313-5

URL: 

Published: 2024-12-25  

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