2021 Fiscal Year Annual Research Report
Provenance study of pottery used for salt processing, excavated from Japanese ancient capitals
Project/Area Number |
20H01364
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
神野 恵 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (60332194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (20290934)
森川 実 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (30393375)
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部考古室, 室長 (40280531)
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
若杉 智宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70511020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 製塩土器 / 律令期 / 胎土分析 / 岩石鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は西大寺食堂院の発掘調査で見つかった井戸SE950から出土した製塩土器の中で、Ⅱーb類以外の資料について、プレパラートを作成したうえで岩石鉱物を同定する方法で胎土分析を委託しておこなった。昨年度、もっとも数量的に多いⅡーb類の資料について、分析を行った結果、考古学的観察に基づく分類内の類似性が確認され、その生産地の候補地として和歌山の北部沿岸を想定して矛盾しないことをつきとめた。今年度は、それ以外の分類に属する資料について、同様の分析をおこなった。その結果、各分類内の類似性を確認することができたが、一部、想定していた生産地と異なる地域の鉱物組成が判明したグループもある。 考古学的観察に基づく資料調査については、古代の主要な塩生産地である若狭地方の製塩土器について、運搬具となりうる小型品を中心に資料調査をおこなった。また、若狭など北陸地域から製塩土器に入れた状態で塩が搬入されていた場合の中継地点となりうる大津宮推定遺跡についても資料収集をおこなった。その結果、大津宮推定地域からは律令期の製塩土器がほとんど出土しないことが確認できたものの、若狭地域の製塩土器については、平城京出土品との峻別が難しいものもあり、胎土分析の必要性を再認識するに至った。 西大寺食堂院資料の生産地推定をするためには、生産地の資料収集を進める必要があるため、発掘調査報告書から食堂院資料に類する資料の抽出を進め、研究発表と論考による発表を進めてきた。次年度以降は、これら資料の収集を進め、分析データの検証を行う基礎データをを蓄積していく予定である。また、とくに奈良時代前半期の製塩土器についても、生産地の推定を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西大寺食堂院資料の製塩土器については、各分類の胎土分析データが揃ったといえる。各分類ごとのデータは、クラスター分析によって、分類ごとに類似性が高いことが確認できている。 また、発掘調査報告書からの資料収集についても、各地域の律令期の製塩土器の様相がおよそ推定できる程度のデータが集まったといえる。また、平城京、藤原京、長岡京の様相とも比較するため大津宮や恭仁京など、古代の消費地の製塩土器の様相についても、資料調査を進めており、各時期、各地の製塩土器の出土状況の違いや類似点などが判明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、考古学的観察によって生産地と推定してきた資料について、生産地の胎土分析データをいかに集められるかが研究の成否を左右するといえる。プレパラートを作成する方法は、破壊が必要な分析であるため、文化財資料の提供には、所蔵する機関の協力を仰ぐ必要があるが、この点は研究の重要性と継続性を訴えて、粘り強く資料の提供を呼びかけたい。 西大寺食堂院資料は資料の量も多く、確実な基礎データの採取が重要と考え、分析に供したが、一方で非破壊による生産地推定の方法を模索することも検討する必要がある。 また、律令期の製塩土器の塩類風化については、苦汁成分の潮解と含浸が原因との仮説を持っているものが、この点については実験による検証が可能であるため、仮説検証の実験をおこない、古代の塩の実態についても検証を進めたい。
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Research Products
(1 results)