2022 Fiscal Year Annual Research Report
Provenance study of pottery used for salt processing, excavated from Japanese ancient capitals
Project/Area Number |
20H01364
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
神野 恵 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (60332194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (20290934)
森川 実 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (30393375)
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部考古室, 室長 (40280531)
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
若杉 智宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70511020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 製塩土器 / プレパラート / 生産地推定 / 律令期 / 胎土分析 / 岩石鉱物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの2年次で、西大寺食堂院出土製塩土器資料のデータについては6グループ26点について、プレパラートを作成し、岩石鉱物学的分析をおこなった。西大寺資料は延暦2年(784)を下限とする紀年木簡を含む井戸から出土したもので、正確には長岡京期に属する資料である。西大寺資料中、筒形のⅡ類に分類するものは奈良時代前半には出現してないことがわかっている。これらの岩石鉱物学的特徴は、泥質岩や砂岩を多く含む点で、白浜から加太、田辺などの紀伊半島沿岸が生産地の有力候補を考えている。この地域では奈良時代後半から平安時代にかけての生産遺跡が発掘調査でみつかっており、Ⅱ-b類に類する製塩土器が出土しているが。奈良時代前半の製塩については、あまりよくわかっていない。 一方、巨大な消費遺跡である平城京では、やや大型の砲弾形の製塩土器が奈良時代には広く用いられたことがわかっている。西大寺食堂院資料の分析から、大寺院という特殊性はあるものの、平城京への塩の供給元は播磨地域と紀伊地域が二大生産地であったことがほぼ確実になったことから、塩の需給関係が奈良時代前半と後半で大きく変わらなかったと仮定するならば、奈良時代前半期の砲弾形製塩土器のうち、主要なタイプのものは紀伊地方産の可能性が高いと考え、プレパラートの作成をおこない、岩石鉱物学的分析をおこなうこととした。 その結果、奈良時代前半期の製塩土器のうち、肉眼目視で西大寺資料Ⅱーb類の胎土に近いものは、おおむね泥質岩や砂岩を多く含む点で、系譜的に同じような粘土と混和剤を用いている可能性が高いことを確かめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平城京へと塩を運んだ土器の生産地推定について、奈良時代前半の様相についても、着手をはじめ、基礎的なデータが蓄積すつつある。播磨地域と紀伊地域については、平安時代には塩生産の荘園地化が進むことが文献資料から指摘されており、海のない大和盆地で育まれた大和王権を支えた塩は、古来よりこの両地域で生産されていた可能性が高いことがわかってきた。今年度は、播磨でも有数の塩生産地である赤穂周辺の官衙遺跡(小犬丸遺跡)の製塩土器について、兵庫県立考古博物館の協力をえて、分析試料を入手することができた。また、紀伊の塩生産遺跡として立戸岩陰遺跡の試料を田辺市教育委員会から提供いただき、分析を進めることが可能となった。さらに、研究を進める過程で、製塩土器の内面に析出したような白色物質が付着していることを発見した。この白色物質については、塩に含まれる苦汁成分と何らかの関係があると考え、XRFなどを用いた分析を進めることとした。分析を進めるにあたっては、実験用の製塩土器を作成し、人工海水を用いた潮解実験などをおこなったうえで、比較対象となるテストピースの作成をおこなう必要があると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
奈良時代前半の資料として、木簡の年紀から天平8年(736)を下限とする二条大路濠状土坑SD5300の製塩土器で、奈良時代前半に比較的多く出土するタイプの製塩土器を選んで、分析をおこなった。合わせて、他機関から入手した資料(和歌山県立岩陰遺跡・兵庫県小犬丸遺跡)の製塩土器についても、プレパラートを作成し、分析をおこなう予定である。 さらに、西大寺の製塩土器に付着する白色物質について、全資料型蛍光X線分析装置を用いた元素マッピングをおこない、苦汁成分の可能性などについても、検討を進める。奈良時代末から長岡京期にかけて、製塩土器による塩の運搬が盛行することは、各地の発掘調査からも明らかにされているが、一方で、山陰地域などほとんど製塩土器が出土しない地域もある。製塩土器による土器の運搬を考えることで、製塩土器が出土しない地域の塩の流通についても、なんらかの理由を考える手がかりを得ることができると考える。
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Research Products
(2 results)