2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H01791
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 秀司 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (50153804)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | モチーフ理論 / 相互層 |
Outline of Annual Research Achievements |
モチーフの理論は数論幾何学,代数幾何学における重要な研究対象である.これに大きな進展をもたらしたのがVoevodsky(2002年フィールズ賞受賞)である.Voevodskyの理論ではアフィン直線にたいするホモトピー不変性が理論の基本的前提条件であった.しかしこれは応用上本質的な制約となる.代数幾何学の様々な基本的な不変量(例えば微分形式の層)はホモトピー不変性を満たさない.また整数論の重要な研究対象であるガロア表現においても,順分岐なものはホモトピー不変性をみたすが暴分岐なものは満たさない.微分方程式においても類似の現象があり,確定特異点型はホモトピー不変性を満たすが不確定特異点型は満たさない.よって既存のモチーフ理論は応用上いまだ未完成な理論であるといえる.当該研究では,Voevodskyが構成した理論を拡張し,上記の不変量や現象をも包括する新たなモチーフの理論の開発を進めている.そのためにVoevodskyのモチーフの理論で中核的役割をはたす「ホモトピー不変性層」を拡張する「相互層」を新たに導入し,Voevodskyがホモトピー不変層にたいし示した様々な基本定理,コホモロジーの純粋性定理,コホモロジーの射影束公式,滑らかなブローアップ公式,Gysin系列の存在定理を相互層にまで拡張することに成功した.さらにその応用として,スキームの射影的な射に沿ったコホモロジーの順像写像の構成に成功した.これはGrothendieckによる微分形式の層のコホモロジーの順像写像や,Grosによるde Rham-Witt層のコホモロジーの順像写像の一般化である.他の応用として, 相互層のコホモロジー上に代数対応の作用を構築することにより,相互層から新たな双有理不変量を構成したり,Bloch-Srinivasのテクニックを用いて新しいコホモロジーの消滅定理を示すことにも成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Voevodskyのモチーフの三角圏の構成において基本的な役割を果たす「ホモトピー不変層」を拡張する「相互層」を新たに導入し, Voevodskyがホモトピー不変層にたいし示した様々な基本定理,コホモロジーの純粋性定理,コホモロジーの射影束公式,滑らかなブローアップ公式,Gysin系列の存在定理を相互層にまで拡張することに成功した.さらにその応用として,スキームの射影的な射に沿ったコホモロジーの順像写像の構成に成功した.これはGrothendieckによる微分形式の層のコホモロジーの順像写像や,Grosによるde Rham-Witt層のコホモロジーの順像写像の一般化である.他の応用として, 相互層のコホモロジー上に代数対応の作用を構築することにより,相互層から新たな双有理不変量を構成したり,Bloch-Srinivasのテクニックを用いて新しいコホモロジーの消滅定理を示すことにも成功した.
|
Strategy for Future Research Activity |
さらにこの新たな理論を分岐理論に応用する研究を進める.分岐理論においては,ガロア表現の暴分岐を統制する導手の概念が重要だが,相互層の理論を用いることにより,分岐理論の導手と微分方程式の不確定型特異点での不正則数を統一的な枠組みで扱うこと可能にすることができる.これは,分岐理論が新たなモチーフ理論において再解釈されることを示すだけでなく,ひとつ相互層を与えるごとに新たな分岐理論が生じることを意味する.
|
Research Products
(5 results)