2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Critical Research into "Politics entailing Ethics" in Western Medieval Scholasticism
Project/Area Number |
21H00469
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻内 宣博 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (50645893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御子柴 善之 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20339625)
山口 雅広 龍谷大学, 文学部, 准教授 (20646377)
鈴木 道也 東洋大学, 文学部, 教授 (50292636)
吉沢 一也 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (60711710)
三重野 清顕 東洋大学, 文学部, 教授 (70714533)
藤本 温 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80332097)
川添 信介 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (90177692)
西村 洋平 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90723916)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 倫理学と政治学 / 道徳と法 / 共同体主義 / 徳倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代哲学については,プラトンにおける「拡大された正義(国制の正義)」と「小さい正義(個人の魂の正義)」との関係を「類似」ではなく「類推」と捉えることによって,倫理学と政治学との結節点を見出す研究の方向性が提示され,また,新プラトン主義における「家/家族」(個人の倫理的問題と政治的問題との中間)の問題を検討することによって,倫理学と政治学が浸透し合う主題としての「友愛」や「正義」の涵養の場の在り方を精査する着眼点が提起された。 中世については,「政治的なこと」と「市民的なこと」との関係性に関する法学者と哲学者との対立を契機として,法における倫理の内在化を検討する方向性が提示され,また,トマス・アクィナスにおけるカリタス(神愛)論の分析から,特定の共同体に限定されない,世界全体に通底する徳に基づく社会共同体を切り拓く理論的可能性を探求する視点が提起され,さらに,トマス・アクィナスとジャン・ビュリダンにおける学問的知識としての倫理学と政治学の基本的な規定や位置づけの検討に基づいて,どのようなタイプの「倫理学を内在化する政治学」が理論的に構想されているかを探る道が示され,最後に,歴史的な観点からは,ヴァンサン・ド・ボーヴェにおける過去の教父たちのテクストの引用方法,および,写本の広がり方に着目することによって,政治的な統治における倫理や道徳の内在の特性を抽出する着眼点が提起された。 近代については,カントの『永遠平和のために』における法と道徳との関係性をめぐる問題を検討し,「真の政治家とは何か」という問題意識を土台として検討する方向性が提示され,また,ヘーゲルにおいては,伝統的な共同体主義を継承する面が見られる一方で,同時に,各個人の欲求充足を人間の自然本性とする近代的な人間観も保持されており,その両者をいかに整合的に繋ぎうるかという問題提起が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の初年度は,「倫理学を内在化する政治学」というテーマについて,古代・中世・近代の各領域の担当者が,どういった問題を提起することができ,そして,その課題を解決するためにどういった研究の方向性を見出せるかを検討することを主眼としていた。 そして,研究実績の概要で記載したとおり,各自の問題設定と研究方向の見通しがそれぞれ提出されたため,おおむね順調に進んでいると評価することができる。 また,3月のワークショップにおいては,八巻和彦先生に講演をしていただき,ニコラウス・クザーヌスにおける階層秩序(hierarchia)の思想に基づく教会組織と世俗組織(神聖ローマ帝国)との並行関係をご教示いただいた。その内実として,中世的な枠組みと均整的な枠組みとが混在した「反対対立の合致」というクザーヌスの根底的な哲学思想が反映された政治思想の在り方が,一つのモデルとして提示され,今後、「倫理学を内在化する政治学」の研究を進めていくうえで,非常に有意義な示唆をいただくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,昨年度と同様に,定期的にWeb会議システムを利用しながら,メンバー相互の研究の進捗状況を把握しつつ,問題点や知見の共有を行っていく。そして,8月か9月には,研究会を開催して,ある程度まとまった形の研究成果のプレゼンテーションを行い,相互に批判検討していく。 また,年度末の3月には,外部の専門家に招待講演を依頼して,メンバーでは不足しがちな領域の補完を行っていく。目下のところは,アリストテレスの専門家,功利主義の専門家,近世スコラの専門家,現代の政治哲学の専門家といった辺りが候補として挙がっている。
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Research Products
(30 results)