2023 Fiscal Year Annual Research Report
「新安理学」の脱構築―中国近世の程朱闕里における思想の変遷に関する通時的考察
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21H00471
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小路口 聡 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (30216163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早坂 俊廣 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (10259963)
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
伊香賀 隆 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 特命研究員 (20722995)
尾崎 順一郎 立命館大学, 文学部, 准教授 (40757085)
播本 崇史 島根県立大学, 地域政策学部, 准教授 (40813572)
藤井 倫明 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (40867454)
工藤 卓司 県立広島大学, 地域創生学部, 准教授 (50895167)
吉田 公平 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (70036979)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新安理学 / 程朱闕里 / 新安理學先覺會言 / 陽明後学 / 陽明学 / 朱子学 / 徽学 / 講学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の研究課題「「新安理学」の脱構築―中国近世の程朱闕里における思想の変遷に関する通時的考察」は、主な研究方法として、文献研究と現地調査の2つの柱を軸に遂行してゆく予定である。まず、現地調査については、コロナの収束を待って、実施する予定であったが、中国国内の事情で、ビザの取得などで煩雑な手続きが必要となり、また、入国後の安全面において多くの懸念材料があることなどから、中国の研究協力者から、メンバー全員に対して、国際会議(陽明心学大会)への招聘もあったが、今回は、科研メンバー全員での現地調査や国際会議参加は見送り、国際会議には、分担研究者の早坂俊廣・藤井倫明の両名が代表で参加することになった。早坂氏は「周汝登的新安行」について、藤井氏は「朱熹的「知」與陽明的「知」」について発表を行った。また、文献研究については、メンバー全員での共同研究として、韓夢鵬輯『新安理学先覺會言』(民国安徽通志館伝抄本)の会読を行う研究会(読書会)については、コロナの収束に伴い、一堂に会しての対面開催を行うことができるようになった。23年度は、2023/06/18(福岡)、1210(東京)、2024/03/17(広島)で開催した。これまで通り、担当者が作成した原典の訓読・現代日本語訳に、詳細な訳注を付したレジュメを、メンバー全員で吟味検討した上で、研究課題に関して、自由に議論を行い、疑問点・問題点などを確認した。それらを担当者が意見集約し、訳注稿を作成する。今回は、藤井・尾崎・播本が担当した。その成果は、広く学界に提供するために、2024年3月25日刊行の学術雑誌『白山中国学』通巻第30号に掲載した。あわせて、その抜き刷りを、国内の宋明学の研究者へ送付する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績概要でも述べたように、本課題に取り組むにあたって、われわれは、文献研究と現地調査という2つの方法を基軸に遂行している。文献研究の方は、コロナの収束にともない、対面での研究会を開催することができた。2023年度は、3回開催した。その研究成果も、学術雑誌(『白山中国学』通巻29号)に2本掲載することができた。今後も、逐次、学術雑誌に掲載してゆき、その成果を、学界に公表していきたい。こちらは、テキストの性格上、読解には難渋を極めてはいるが、今後も、会読という方法の利点を活かし、議論をしていきながら、精読に努めていきたい。全巻通読を目指しているが、おそらく最終年度(2024年度)中に読了は難しいと思うが、それなりの成果は上げていると思う。一方で、中国の、当該研究対象地域(安徽省)への現地調査、および、現地の大学・研究機関との研究交流については、上記の事情で2023年度もまた中止を余儀なくされた。よって、総合的に判断すると、「やや遅れている」といわざるを得ないだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で、最終年度を迎えることになるため、これまでの研究のまとめを行いたい。 まず、本研究の2本の柱のうちの文献研究については、引き続き、共同研究として行ってきた、明代の嘉靖年間から万暦年間の時期に、王畿、羅汝芳、劉邦采、耿定向ら陽明門下の主要な思想家たちが 「新安」において行った講会講学の記録(「会語」類)を集めた『新安理學先覺會言』の会読を行う。全巻通読を目指しているが、おそらく最終年度(2024年度)中に読了は難しいと思うが、これまでの会読を通して、それなりの成果は上げていると思う。引き続き、続けていきたい。続けることに意味がある。一つの区切りとして、これまでの精読の結果を通して、明代の嘉靖年間から万暦年間の時期の新安地域における知識人の活動状況を整理することを通して、「新安」地域における朱子学と陽明学の興隆と衰退、そのせめぎ合いの過程の解明を進めていくきたい。その上で、それを軸として、さらに各メンバーの個別研究・専門領域に基づき、それぞれの視点から、多角的に光を与えることによって、「新安」地域において盛衰した学術思想の陰影の歴史、および、その時代ごとの地域的特色を多面的に解明していきたい。全体として、以上の全体・個別研究を踏まえながら、「新安」という場(トポス)の思想史的意義を重層的・構造的に解明していくことを目指す。本年度が最終年度であることから、これまでの研究成果のまとめとして、8月に、中国の研究協力者を招聘し、信州大学で、国際会議を開催する予定で、現在、早坂・鶴成両氏を中心に、その準備を進めている。
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Research Products
(16 results)