2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the compensation system in preparation for materialization of catastrophic risk
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21H00671
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大坂 恵里 東洋大学, 法学部, 教授 (40364864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神戸 秀彦 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (70195189)
下山 憲治 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00261719)
除本 理史 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60317906)
大島 堅一 龍谷大学, 政策学部, 教授 (00295437)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 巨大リスク / 原子力 / 気候変動 / 災害 / 事故 / 賠償 / 補償 / 費用負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学技術の発達に伴い、加害者の賠償資力を大幅に超える規模の損害を生ぜしめる可能性がある巨大リスク(catastrophic risk)を内包する活動が増えている。本研究の目的は、現代社会の巨大リスクの顕在化に備えた賠償・補償に関する法制度のあり方を提示することである。(1)危険責任に関する従来の法理論について、文献調査を起点に巨大リスクの顕在化に備えた賠償・補償制度の設計に向けた再構成を試み(法理論の研究)、(2)従来のリスク研究の深化を通じて巨大リスクの特性分析と類型化を行い(巨大リスクの特性の分析)、(3)巨大リスクの事後的分配の実例である福島原発事故賠償スキームの検証を行い(福島原発事故賠償の検証)、(4)提示する法制度の実行可能性について費用負担の観点から検討する(費用負担制度の検討)という研究体制をとっている。 研究実施2年目の今年度において、法理論研究班は、国内外の危険責任等に関する法理論の先行研究の文献調査を継続して行い、今後の検討の基礎作業として課題の絞込みを行った。巨大リスク特性分析班は、国内外のリスク学に関する先行研究の文献調査を継続して行い、巨大リスクの特性を検討した。福島原発事故賠償検証班は、福島原発事故賠償スキームの形成過程に関する文献調査、関係者のインタビュー調査を引き続き行った。費用負担制度検討班は、原発の費用負担についての検討を継続して行った。 これら各班の研究成果を共有する一環として、日本環境会議福島原発事故賠償問題研究会と共催で、研究会を6回開催した(4月3日、6月4日、7月9日、9月11日、10月30日、11月30日)。また、研究代表者の大坂が、高レベル放射性廃棄物最終処分場候補地の一つとされている北海道寿都町の視察を行い、アメリカでの調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要や研究発表(令和4年度の研究成果)で示したとおり、研究代表者および研究分担者それぞれが、研究成果の一部を論文として公表することができた。コロナ禍が収束したことで、研究代表者による国際学会での報告および海外調査も実現することができた。 今年度は、巨大リスクの顕在化の具体例である福島原発事故について、最高裁判決が初判断を行い、また、損害賠償に関する国の指針が改定されるという重要な動きがあったが、全体研究会を昨年度よりも多く開催することで、情報や意見を交換する場を十分に確保できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究計画に沿って研究を実施していく。 法理論研究班は、国内外の危険責任等に関する法理論の先行研究の文献調査を継続しつつ、巨大リスクの顕在化に備えたあるべき賠償・補償制度の研究を行う。巨大リスク特性分析班は、国内外のリスク学に関する先行研究の文献調査を継続しつつ、巨大リスクの特性の分析を踏まえた巨大リスクの類型化を試みる。福島原発事故賠償検証班は、福島原発事故賠償スキームの形成過程・運用実態に関する文献調査や関係者のインタビュー調査を継続しつつ、当該スキームの検証を行う。費用負担制度検討班は、責任当事者の事後的費用負担制度・潜在的責任当事者の事前的費用負担制度の検討を継続する。 研究総括班は、全体研究会の開催等を通じて、各班の進捗状況に応じた研究成果の共有・再整理を行う。全体研究会のうちの1回は、本研究の中間報告会として開催する予定である。また、海外調査も実施したい。
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