2022 Fiscal Year Annual Research Report
Co-operation between institutions/regulations and innovation, and corporate behaviour
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21H00739
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
仙石 愼太郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00401224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (10411836)
児玉 耕太 立命館大学, テクノロジー・マネジメント研究科, 准教授 (90419424)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 経営戦略論 / 経営組織論 / 技術経営論 / 公共政策論 / 規制科学 / 医薬品開発 / 医療経済効果 / 費用対効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
①-1. ヒトマイクロバイオーム技術の事例について、規制・制度的介入の意義と効用、課題を整理し、昨年度の成果と共に事例研究を完了した。過去20年間のイノベーション研究を対象に、マクロ及びミクロレベルの計量書誌学的分析アプローチを適用し、本分野の研究軌跡を体系的に理解した。その結果に対して予測論的アプローチを援用し、統合的イノベーションマネジメントモデルを提案し、本検討課題の目標を達成した。 ①-2. 前年度に構築した医薬品・医療機器分野の事例の調査パネルを運用した。技術標準化の対象・アプローチの観点に加え、技術プラットフォーム及びプラットフォーム・リーダーシップの概念を導入することにより、技術規格・標準とイノベーションの相互作用が産業動向及び企業行動に反映されるプロセス・メカニズムの解明を進めた。 ①-3 昨年度に引き続き医療の経済評価に関する研究を医学系研究者との共同研究として行った。医療の価値評価の現状に関する課題の整理を行い、医療の価値評価の方向性として、個人に対する評価の深化と波及効果を含めた社会全体への評価の二つの方向性があることがわかった。 ②-1. 前年度から継続し、2015年の機能性表示食品制度の導入前後の企業行動を観察し、参入(或いは撤退)の鍵となる要因を抽出し、企業内部における知識獲得・融合プロセスと企業間の分業構造の変化を整理・理解した。 ②-2. 創薬研究開発で注目を集める免疫チェックポイント阻害薬を事例とし、戦略的取引(提携、買収、投資等)の経済的効果(製品売上やR&D生産性等)を検証した。デジタルヘルス等の先進技術領域にも範疇に加え、企業間の提携のダイナミクスを経時的・定量的に評価した。 ②-3. 研究課題で実施した事例研究の成果をもとに、公的・大型競争的研究助成制度や政府の支援制度の寄与、コンソーシアム活動による規制・制度形成への貢献について深耕した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画を滞りなく遂行すると共に、2023年度に予定していた事例研究及び実証分析・検証の一部を前倒しで実施し、成果を6本の査読付国際誌論、2本の査読付国際学会紀要及び1本の査読無論文として出版した。 [仙石] 事例研究と計量書誌学研究をもとに、 5つのステークホルダー(産業界、政府、学術界、自治体、市民)と3つの論点(オープンイノベーション、持続的イノベーション、ビジネスモデルの革新)を包絡した統合的イノベーションマネジメントモデルを構築した。機能性食品分野の事例研究をもとに、リスク及びベネフィットを介した規制・制度のイノベーションへの影響プロセス、企業内部における知識獲得・融合プロセス、企業間の分業構造の変化等を明らかにした。医薬品及びデジタルヘルス分野の事例研究に関しては、企業DBをCortellisと公開情報をベースに構築し運用を開始した。複数の事例について、技術プラットフォームとプラットフォーム・リーダーシップの概念を援用し、外部連携を介した知的財産・技術標準の価値形成メカニズムを明らかにしつつある。 [児玉]今年度に抗がん剤(免疫チェックポイント阻害薬)事例において得られた成果を、認知症(アルツハイマー病)や希少疾患をはじめとする多領域に展開する。アルツハイマー病に関しては、診断方法別の費用対効果の分析を行う。 [後藤] 医薬品・医療機器等に関する費用対効果評価については、企業側が提出する分析をレビューする公的分析班の経験から、医療技術評価や医療技術の価値についての企業と公的機関との視点の違い等についての知見が蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえ、社会的な規制・制度が研究開発・イノベーション活動に及ぼす影響を観察し、その共進的な発展のプロセス・メカニズムを理解し、企業のグローバルな事業活動とローカルな規制・制度対応の両立の在り方を探究する。具体的には、以下の研究分担のもとで実施する。 [仙石] 公共政策・制度論の研究成果である統合的イノベーションマネジメントモデルに立脚して、経営戦略・組織論の視座から、各種の規制・制度的要件が企業行動に及ぼす影響をモデル化し検証する。その理解のもとに、制度・規制とイノベーションの共進性と企業行動を統合的に考察・検証する。 [児玉] 医薬品開発とデジタルヘルス・モバイルヘルス領域の間のサービス開発におけるイノベーション・プロセスの差異・特性を理解し、これらを踏まえた制度・規制の改革案を検討する。また、両分野の国際間、特に日米間の同一性や差異についても考察する。 [後藤] 個々の医療技術に対する経済評価を続けていくと同時に、経済評価の分析結果を政策意思決定に反映する際の問題点についても検討する。その際、企業と公的機関との医療の価値評価の目的の違いを明らかにし、その違いを調整するメカニズムについても検討を行っていく。 [木村] 機能性表示食品制度の事例における、企業内部における知識獲得・融合プロセスと企業間の分業構造の変化の整理・理解をもとに、産業界・社会への提言に繋げる。また、ヘルスケア分野の製品・サービスの価値の評価の在り方についても検討を行っていく。 研究の進め方としては、研究の進捗確認と情報交換の機会として、四半期の研究班会議を開催し、内1回は研究協力者を加えた拡大会議とする。本年度半ばに中間とりまとめのワークショップを、2024年度に成果報告の国際シンポジウムを開催し、国内外の有識者を交えた協議と成果発信の機会とする。
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