2021 Fiscal Year Annual Research Report
自己駆動体の集団運動に対する数理モデリングと数理解析
Project/Area Number |
21H00996
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長山 雅晴 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20314289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北畑 裕之 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (20378532)
中村 健一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40293120)
田中 晋平 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 准教授 (40379897)
中田 聡 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (50217741)
後藤田 剛 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (80822105)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 数理モデリング / 反応拡散系 / 特異極限方程式 / 集団運動 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
水面の表面張力を変化させることで運動する自己駆動体が複数個あるときに観察される集団運動を理論的に解明することによって,集団運動の形成される要因が示され,生生物が見せる集団運動原理の解明に繋がることが期待できる.この研究では,数理モデリングと実験検証の相補的研究によって,自己駆動体に現れる集団運動の発現機構およびその形成機構について数理科学的点からメカニズム解明を目指している. 空間2次元での液滴運動を再現するためには,変形可能な液滴を表現する表現モデルの構築が必須となる.その表現法としてPhase-Field法の1つであるAllen-Cahn方程式に注目した.Allen-Cahn方程式に保存量を導入することによって自己駆動体運動の数理モデルの構築を目指している. 初年度の2021年度は,準体積保量を持つAllen-Cahn方程式を用いて,自己駆動体運動を記述する空間1次元準保存型反応拡散型モデルの構築を行った.この数理モデルの特異極限モデルが自己駆動体運動モデルと一致することを形式的に示すことができた.それによって,空間1次元準保存型反応拡散型モデルの持つあるパラメータが水面の抵抗と一致することも明らかになり,そのパラメータをフリーパラメータにすると,初期関数の体積に依存して臨界および亜臨界のピッチフォーク分岐現象が現れることがわかった.これも自己駆動体運動モデルの結果と定性的に一致していることがわかった.同様に,2つの自己駆動体運動を表現する準保存型反応拡散型モデルに対しても,自己駆動体運動モデルの結果と定性的に一致することがわかった.この空間1次元準保存型反応拡散型モデルと化学反応を結合した数理モデルを構築し,間欠振動現象を定性的に再現することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反応拡散型の空間1次元自己駆動体運動モデルを確立することに成功した.この数理モデルが持つ微小パラメータの特異摂動によって得られる特異極限モデルに対して,ある仮定のもとで,これまで取り扱っていた自己駆動体運動の1次元モデルに一致することを形式的に示すことができた.これによって,反応拡散型自己駆動体運動モデルは自己駆動体運動モデルのε近似モデルとして形式的ではあるが,定式化することができた.さらに2つの反応拡散型自己駆動体運動モデルの数値計算から,円環領域における2つの自己駆動体ダイナミクスを再現することもできた.このことから、来年度以降取り扱う自己駆動体の手段運動の数理解析に対しても今後の研究進捗が十分期待できる.現時点では,反応拡散型自己駆動体運動モデルを用いて中和反応を伴う水面上の自己駆動体運動の数理モデリングに着手しており,今後は円環領域における液滴集団運動の数理モデリングおよび数値計算に取りかかる予定となっている. 今年度は少人数ではあったが,札幌非線形現象研究会,応用数理研究会,北陸応用数理研究会を予定通り開催することができ,情報交換や研究交流もある程度行うことができたが,予定していた大規模な研究集会の開催は新型コロナウイルス感染症流行が収まらず次年度開催となった.予定していた国際研究会ReadDiNetはOnlineで無事開催することができた.以上のことから,当初の研究計画と比較して概ね順調であると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は水面上を動く自己駆動体運動モデルの数理解析を中心に行う.具体的には次の通りである. [1] 数理モデルの近似モデル導出の正当化:前年度に構築した空間1次元での反応拡散型自己駆動体モデルに対して,準保存型AC方程式の特異摂動展開から得られた準保存界面方程式への収束について考察する.また,完全保存モデルの理論的な導出を行い,反応拡散型自己駆動体モデルから樟脳運動モデルへの収束を議論する. [2] 自己駆動体運動の数理解析:前年度に構築した面積保存型AC方程式を用いた自己駆動体数理モデルに対して,空間2次元に拡張することで,変形を伴う液滴運動や変形しない固体樟脳運動を1つのパラメータで表現することが可能な数理モデルの構築を目指す.そして数理モデルの数値計算からどのような運動が再現されるか明らかにする.加えて,我々の数理モデルの物理モデルとしての正当性を示すために,自己駆動体の界面エネルギーや水面の表面張力エネルギー等を用いたエネルギー勾配流モデルの構築を目指す.そして反応拡散型自己駆動体モデルとエネルギー勾配流モデルの相違点を明らかにし,我々の数理モデルがエネルギー勾配流モデルの近似モデルとなるのか検証を行う. [3] 化学反応を伴う液滴運動を記述する数理モデルと実験検証:複数のサリチル酸エステル液滴が水溶液中に含まれるSDS分子と水面で化学反応を起こしながら,円環水路に見られる複数液滴の集合・離散運動を繰り返し,やがて停止する現象が知られている.前年度に構築した空間1次元反応拡散型モデルに化学反応モデルを加えた数理モデルを構築し,現象の再現を目指す.そして,この集団運動の発生メカニズムを明らかにする.
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Research Products
(18 results)