2023 Fiscal Year Annual Research Report
Can the water carried into the Earth's interior by plate subduction return to its surface by earthquakes?
Project/Area Number |
21H01187
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 愛幸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90508350)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スロー地震 / 水 / 重力 / プレート沈み込み帯 / 地殻流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スロー地震等の地震活動に伴う重力異常の観測を目的とし、これまでの観測手法では困難だった、より短い継続時間をもつスロー地震に伴う重力異常の検出を目指している。新たな観測手法は、既存手法と連続観測を組み合わせたハイブリッド手法である。2023年度は、南海トラフのスロースリップ発生域において既存手法による重力観測を実施し、長期トレンドの評価に用いるデータを蓄積した。東海地方では、3観測地点の観測結果から、重力変化に位相差が存在し、北西に変化が伝播するように見えることを発見した。本研究計画で取得した連続観測可能な重力計の長期安定性の評価を終えた。さらに、重力計の短期的精度を検証するための観測を他のプロジェクトと共同で実施した。その結果、短期的なシグナルである潮汐が引き起こす重力変化が、ノイズの大きい観測地点においても十分な精度で観測できることが確認できた。巨大地震後に生じる余効変動を再現するための球体地球モデルの構築を進めた。具体的には、地球構造の水平不均質や非線形レオロジーをモデルに取り入れるとともに、地震時断層すべりを球体地球モデルで高精度に求めた。また、モデルの比較対象とする衛星重力データの解析に着手した。流体移動に関わるモデル開発として、断層の開口成分に伴う重力変化をモデル化するとともに、スロースリップ域において流体が供給される場合の潮汐に対するすべり応答の定式化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精度評価を行った重力計の南海トラフ域への移設は2023度中に行う予定であったが、2024年度に延期した。これは、重力計を購入する際に経費を合算したプロジェクトにおいて、2023年度に重力計を利用する必要性が生じたためである。そこで、重力計の精度評価をより詳細に行うとともに、モデル開発、データ解析を先行して行った。以上から全体としてはおおむね予定通り進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、スロー地震等の地震活動に伴う重力異常の観測を目的とし、これまでの観測手法では困難だった、より短い継続時間をもつスロー地震に伴う重力異常の検出を目指している。今年度は、昨年度までに引き続き南海トラフのスロー地震発生域で既存手法による重力観測を継続する。併せて、既存の観測手法による南海トラフ域での重力データを用いて、各スロー地震発生域における重力異常の長期トレンドを求め、結果をスロー地震発生域間で比較する。さらに、昨年度までに精度評価を行った連続観測可能な上記の重力計と、既存の重力計とを組み合わせたハイブリッド重力観測を、短期・長期スロースリップの両方が生じている東海地方で開始する。得られた重力データを解釈するための理論開発を継続する。東海地方では、2011年東北地震の余効変動により、2011年以降のデータの解釈の際にこの影響を除去する必要がある。そこで、これまでに開発した球体モデルにより余効変動の寄与を見積もる。また、スロー地震発生域における水の移動を定量的に記述するため、間隙弾性体理論に基づく定式化を行うとともに、数値シミュレーションによる、スロー地震に伴う水の移動の再現を試みる。
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