2021 Fiscal Year Annual Research Report
A methodology for fair description of value in community development for the resolution of social conflicts
Project/Area Number |
21H01508
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 昌弘 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (50714391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 伸 東京都市大学, 都市生活学部, 准教授 (50706942)
宮本 匠 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 准教授 (80646711)
木村 周平 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10512246)
佃 悠 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90636002)
井本 佐保里 日本大学, 理工学部, 准教授 (40514609)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | まちづくり / 社会的葛藤 / 地域コミュニティ / 協働 / アクション・リサーチ / エスノグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,各研究分担者の研究・実践活動状況の共有に重点を置いた。計8回開催した研究会では毎回1名が,それぞれのフィールドや学問分野における記述の倫理的・方法論的課題を紹介し,「価値の公正な記述手法の検討・実装・検証」に向けた議論を交わし,以下の共通の視点と課題を抽出した。 なお,研究分担者のフィールドは東京・下町の再開発地区,京都の防災まちづくりコミュニティ,中越地震で被災した限界集落,東北の共助型住宅コミュニティ,トルコ地震後の復興再開発地区,ケニアのスラムの学校建設現場など,多岐にわたった。 1)まちづくりの現場における価値観の多様性と社会的葛藤:ステークホルダー間の思惑や利害の不一致(社会的葛藤)は,それをとりまく固定化された制度や概念・モデル,そして時代状況への地域の態度(「集合的否認」等)によってより先鋭化されていることが多く,制度や概念・モデルの「ほぐし」や,受け入れがたい事実(災害,人口減少等)の受容が課題となる。 2)研究者・実践者の現場での役割と葛藤:まちづくりコーディネーター,建築計画者,施策立案支援者,外部支援者,エスノグラファーといった様々な立場で研究者は現場に関わっており,それぞれに特有の記述の困難さがある。記述の困難さは,それぞれの研究者の学問・ディシプリンに由来する部分に加え,ひとりの人間としての現場との関わり方にも由来しており,記述の主体と対象をどのように設定するのかといった課題があることがわかった。 3)社会的葛藤と価値の記述にむけて:記述することを何かをつくりだす「共有のツール」とするために,先のみえなさ(とそれがもつ可能性)との付き合い方,「めざす」だけでなく「すごす」関わりといった記述主体の態度に加え,記述する主体と対象の再定位が必要となり,記述に際しての主体と対象の交代,主体の拡張(「モノ」も主体,ANT等)といった可能性も浮上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者がそれぞれ,地域の課題解決に関わりながら研究・実践活動を行っているという共通点をもちつつも,異なる学問・ディシプリン(建築・都市計画,社会心理学,文化人類学)に属しているため,初年度はそれぞれの研究フィールドの紹介にくわえ,各研究分担者が抱く「価値の公正な記述」という本研究のテーマの設定やアプローチの方法について議論することに多くの時間を費やした。議論を通じて,次年度以降に取り組む共通の課題を具体化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,研究分担者である宮本(社会心理学,アクション・リサーチ),木村(文化人類学,エスノグラフィ)がそれぞれの学問領域における記述の方法論を紹介し,それを受けて都市・建築計画分野の研究者である前田・中島・佃・井本のフィールドにおける記述手法への応用の方法を検討することで,「価値の公正な記述手法の検討・実装・検証」の議論をさらに発展させる予定である。
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