2022 Fiscal Year Annual Research Report
空き地の時間的集約・再編とそのマネジメント手法の体系化
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21H01511
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 新 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (40292891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 俊彦 立命館大学, 理工学部, 准教授 (00608466)
矢吹 剣一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (10837090)
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (20447345)
安森 亮雄 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20456263)
蕭 耕偉郎 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (30796173)
星野 裕司 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 准教授 (70315290)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 空き地 / 空地 / 暫定利用 / 空地アーバニズム / 空き地の価値 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、縮退局面にある都市の市街地において暫定利用されている空き地の変容プロセスとそれが市街地に及ぼす効果を分析することから、スポンジ化した市街地の改善に資する「空き地の時間的な集約・再編」の手法とそのマネジメントのあり方の体系化を目的とする。短期間での空き地の暫定利用や長い時間軸で捉える空き地の変容事例を対象に、そうした空き地の動態(資源化→利用(暫定利用)→空き地への復帰→次への維持管理)分析、ならびに、空き地の動態と周辺市街地への影響の様子の関係を分析することが主な研究課題である。 本研究は、研究課題A「空き地の変容プロセスのマネジメント手法に関する研究」研究課題B「空き地の変容プロセスが市街地に及ぼす効果の検証」研究課題C「空き地の時間的集約・再編とそのマネジメント手法の体系化」という3つの研究課題に分割できる。 研究課題Aでは、神奈川県川崎市の空き地で「資源化」「暫定利用」の社会実験を継続実施した。夏季と冬季のマーケット利用を実施して、時期によらず緩やかに滞留・交流できる場としての価値創出を確認した。研究課題Bでは、空き地変容による市街地改善効果をの評価フレームを検討する観点から神戸市長田区駒ヶ林地区の空き地群の現地調査を行った。地区内の空き地の放置・管理状況、まちなか防災空地や菜園等での利活用の動向、それによる周辺土地利用への影響等について分析した。研究課題Cでは、「空き地の価値」と「空き地の時間的側面」に関する原論的な整理をふまえた研究集会(縮小時代における空地活用の方法論)を行った。その議論を踏まえて、空き地原論、空き地をとらえなおす技法、空き地から都市を変える技法について仮整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題Aでは、川崎市での社会実験を継続実施した。夏冬のマーケット利用から、時期によらず滞留・交流できる場の価値創出を確認した。終わりを明示しない暫定利用の複数年継続から、地域社会の受け止め方変化や認知度向上など「空き地の暫定利用のために設定した時間軸」とは異なる「地域の時間軸」において有意味な事象(地域商業者による継続的なマーケット出店、空き地での菜園的利用とその収穫物を用いたワークショップ等のマーケット出店等)を生じさせ、空き地に複数の時間が流れている状況の生成が確認できた。 研究課題Bでは、空き地変容による市街地改善効果の評価フレームを検討する観点から現地調査を行った。神戸市長田区駒ヶ林地区では、阪神淡路大震災後の市街地再開発事業が行われたエリアの周辺に多数の空き地が存在する。以前より「まちなか防災空地」として空き地を使用管理する方策がとられていた。2019年に菜園利用を開始したある空き地から、隣地の空き家利用が始まった。更に新たな菜園利用が近隣の空き地で始まった。灘中央市場においては店舗退去後の空き区画をまちなか防災空地に指定しつつ広場利用する事例が複数始まり、同市場のまちづくり機運を作り始めている。以上のケーススタディから空き地変容による市街地改善効果を評価する視点を検討し「空き地から都市を変える技法」の一つとして整理した。 研究課題Cでは、空き地の価値と時間的側面に注目した研究集会(縮小時代における空地活用の方法論)を開催した。その議論を踏まえ、空き地原論(空き地の価値、空き地の時間的側面)、空き地をとらえなおす技法(価値の生成、価値の再認識、そのままにする、位置づける、許容する)、空き地から都市を変える技法(群として活用する、空き地から価値を高める、空き地を整える、空き地をまとめる、計画規範を転換する)の各内容について仮整理を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題Aについては、過年度より各研究分担者が研究対象とする市街地について、空き地の変容プロセス(資源化→暫定利用→空き地復帰→維持管理)の各段階の実態を把握するための調査分析(空き地利用までの経緯、実施主体、期間、具体的方法、権利設定等、適用制度、政策等の位置付け、利用終了の背景、等)または可能な対象地については社会実験を中心とする空き地変容プロセスの実践・参与観察(2箇所程度を想定)について引き続き調査分析する。空き地に複数の時間が流れている状況(複層化)をふまえ、それぞれの時間軸にて生じている事象の相互関係の解明作業も分析の視点に加える。 研究課題Bについては、研究課題Aの調査対象となる空き地を含む市街地全体の変容についての調査(計画図書等の収集、市街地調査(広域/狭域 )、関係者ヒアリング等)を継続する。R4調査では(研究課題Aの対象ではないが)市街地変容と空き地の変容の関係についてのケーススタディが可能な対象地を選定し、調査分析に着手できており、その作業を今年度も継続させる。以上の作業成果をもとに、空き地と市街地変容を時系列で重ね合わせてその関係を分析するための枠組みを引き続き検討する。 研究課題Cについては、課題Aおよび課題Bの作業と連動させながら、空き地原論、空き地をとらえなおす技法、空き地から都市を変える技法について「空き地利用の時間的集約(多様な時間幅の暫定利用の重ね等)に関わるマネジメントの仕組み」および「空き地利用の時間的再編(前倒し、先送り、等)に関わるマネジメントの仕組み」の二つの観点から体系的な整理を試みる。
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