2022 Fiscal Year Annual Research Report
イネ大規模交雑集団からの高温登熟耐性系統の選抜と遺伝・形態・環境要因の解明
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21H02165
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 将紀 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00432550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松葉 修一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (00370594)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イネ / 高温登熟性 / 気象条件 / 出穂期 / QTL / 品種や系統の選抜 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本全国で夏場の高温が続くため、イネの高温登熟に伴う白未熟粒発生要因の解明と対策が必要である。将来においてもコメの生産を大きく担う、北海道は高温登熟を警戒すべき時期が到来している。大規模な日本水稲交雑集団より高温登熟耐性系統を選抜して、これまで4地点(北海道、新潟、福井、兵庫)で栽培して高温登熟性やイネの形態ならびに環境を複数年にわたって調査し、全ゲノム解読や遺伝子型決定によって遺伝的要因も含めた特性を解明していく。また、これらの系統は高温登熟耐性育種への母本としての貢献が期待できる。その一方で、日本水稲における高温登熟性の遺伝様式を明らかにするため、QTL解析を行う。高温登熟耐性を付与するために、日本各地に最適なハプロタイプ組み合わせが提唱できる。 本年度は研究代表者が新潟大学へ異動となり、気象変動や初めての試験栽培のためにやや進捗は遅れたが、実験はやり遂げることができた。新潟市、札幌市、福井市でRIL集団を栽培して、高温登熟に関する種子形質を調べ、QTL解析を行い、出穂期の影響と登熟気温の影響を受けながらも複数QTLの関与が考えられた。「コシヒカリ」/「きらら397」ならびに「コシヒカリ」/「アケボノ」の組換え自殖系統群に有用なアリルや高温登熟耐性系統があることが確認された。 当初申請していた兵庫県加西市、新潟市、札幌市、福井市でこれまでに得られた形質データや環境データは貴重であり、引き続きデータの収集に努めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は研究代表者が新潟大学へ異動となり、新潟市、兵庫県加西市、札幌市、福井市で得られた形質データや環境データは貴重であり、引き続きデータの収集に努めていき、各年のデータをまとめていく。各地域での高温登熟性と高温登熟耐性育種の研究を推進していく。 日本の4地点(北海道、新潟、福井、兵庫)で高温登熟耐性候補系統を年次変動も考慮して2021年度から4ヶ年栽培し、高温登熟性と農業形質(到穂日数、稈長、穂長、穂数、精玄米重、玄米千粒重)を調査して各関連を調べていく。
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Strategy for Future Research Activity |
新潟市で栽培された組換え自殖系統(RIL)集団を、穀粒判別器(サタケRGQI20A)などを利用して測定したところ、各系統の出穂期や千粒重ならびに高温登熟耐性には年次間に正の相関関係が認められ、年次変動は確実に認められるものの、各系統の形質の傾向は同様であった。高温登熟耐性の指標としている整粒比と収量性との相関は高くなく、白未熟粒である乳白や基白の発生率と弱い相関がある環境で検出された。「コシヒカリ」/「きらら397」RILからは2系統が、早生で高い整粒率、収量性は「コシヒカリ」並を示す候補として選抜できた。またこの系統については、札幌市や福井市でも同様の結果が得られ、引き続き栽培試験を重ねていく。各RIL集団はGRAS-Di技術による遺伝子型が決定されて連鎖地図が作成され、各RILゲノムの概要が把握できたが、高温登熟耐性には複数のQTLの関与が示唆された。 「コシヒカリ」/「きらら397」RILのQTL解析を行ったところ、千粒重は染色体6に札幌と新潟で安定したQTLがあったが、整粒率はGhd7の影響が大きかった。染色体5の粒長QTLが札幌と新潟で安定していた。
「コシヒカリ」/「アケボノ」RILを使った高温登熟性のQTL解析を行ったところ、「コシヒカリ」と「アケボノ」のアリルから、高温耐性を示す系統が発見された。主に「コシヒカリ」アリルで高温耐性になるQTLが多かったが、「アケボノ」アリルでの高温耐性になるQTLも検出できた。新たな高温耐性QTLとなり、新品種育成に寄与できると考えられた。
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