2021 Fiscal Year Annual Research Report
Diversity of defensive mechanisms using sequestered prey toxins in snakes: From passive oozing to spontaneous spraying
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21H02551
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 哲 京都大学, 理学研究科, 教授 (80271005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江頭 幸士郎 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10738826)
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
竹内 寛彦 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (40726444)
城野 哲平 広島修道大学, 人間環境学部, 准教授 (70711951)
土岐田 昌和 東邦大学, 理学部, 准教授 (80422921)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 防御機構 / 毒 / 進化 / 爬虫類 / 頸腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナ禍の影響で海外渡航がまったく実施できなかったため、国内のヤマカガシを対象とした研究を中心に行った。行動学的実験と化学分析を併用して、本種がヒキガエルを認知する際に利用している化学物質の特定を試みた。その結果、ブファジエノライドの前駆物質を利用している可能性が示唆された。一方、ヒキガエルから取り込んだブファジエノライドの変換の様式や能力を評価するため、日本各地から採集したヤマカガシの頸腺成分を分析し、ヒキガエルの毒成分の地理的変異と比較した。これにより、ヤマカガシの毒成分は取り入れたヒキガエルの毒成分を概ね反映しているものの、多くの場合は何らかの微小な変換をしてから取り込んでいることが明らかになった。 海外産の種に関しては、これまでに中国で採集した行動実験データの解析を行い、イツウロコヤマカガシはブファジエノライドを有するマドボタル亜科のホタルの体表化学物質にのみ嗜好性を持ち、ブファジエノライドを持たないホタル類には嗜好性を示さないことがわかった。また、海外産ヤマカガシ類12種の既存の頸腺毒サンプルの化学分析を行い、これらの種もブファジエノライドを主成分とすることを確認した。 一方、インドネシアの海外共同研究者の協力を得て同国産のヤマカガシ類の採集を行い、特にシロハラヤマカガシの標本を初めて入手した。これにより、本種は頸部ではなく後頭部および側頭部に、頸腺と相同と考えられる、これまでまったく知られていない形状の器官を持つことが判明した。また、中国の共同研究者の協力でミミズを主食とする同国産ヤマカガシ類の頭部形態のマイクロCT撮影を実施することによって、カエル食とミミズ食の種を比較し、摂餌に関わる形態要素の種間差を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による厳しい海外渡航制限のため、本研究課題の中核的要素である海外産種を扱った分析や実験をほとんど行えなかった。そのため、全体的な進捗はかなり遅れている。しかし、海外共同研究者による現地での調査と分析、ならびに、国内に保管していた既存のサンプルを用いた解析によって、いくつかの新知見は得られつつある。また、研究課題の本筋からは若干逸れるものの、ヤマカガシの餌認知や餌毒の取り込みに関わる化学的分析によって新たな成果も得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3つの主課題と2つの副課題を並行して実施する。主課題:(1) 形態・構造の解析、(2) 毒及び匂い成分の化学分析、(3) 機能的仕掛けの実験検証。副課題:(1) 系統関係の確立による進化過程の解明、(2) 個体発生起源の探究。 コロナ禍による渡航制限が続く期間は、主に国内で研究を進める。主課題1を実施するため、研究室に既に保管されている液浸標本および新たに野外で採集した個体を用いて、マイクロCTスキャンによるヤマカガシの頸腺形態の解析を行う。野外で採集した個体のうち、妊娠雌からは卵管内の胚を摘出し、副課題2の頸腺の発現に関わる遺伝子の特定を試みる。また、主課題3を実施するために、生体を用いて行動実験を行い、頸腺から毒液が噴出する仕組みを検証する。主課題2については、既存の海外種のサンプルを用いて頸腺液の化学成分分析を進めるとともに、野外採集したヤマカガシから匂い物質を検出し、その同定を試みる。副課題1に関しては、既存のDNAサンプルを用いて、より信頼度の高い系統樹を作成するために遺伝子座数を増やした解析を進める。 海外渡航が可能になれば、中国およびインドネシアを中心に調査に向かう。中国では共同研究者の協力のもと、イツウロコヤマカガシをはじめとしたホタル毒利用種を中心に採集し、毒成分と匂い物質の抽出、頸腺毒の滲出に関わる微細構造の観察および機能的メカニズムの行動分析に取り組む。インドネシアではボゴール動物学博物館の標本を用いての形態観察をするとともに、スラウェシまたはボルネオ南部において、新規な形状の器官を持つシロハラヤマカガシと頸部伸長型の頸腺を持つアオクビヤマカガシなどの種の捕獲と分析を試みる。さらに、スリランカおよび台湾でのヘビの採集と主課題1から3の実行に臨む。
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Research Products
(11 results)