2023 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms and target molecules associated with progression and treatment resistance of urologic cancers associated with microbiome alterations by diet and obesity
Project/Area Number |
21H03064
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
羽渕 友則 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (00293861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堂前 直 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 副部門長 (00321787)
嘉島 相輝 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (50842952)
南條 博 秋田大学, 医学部附属病院, 准教授 (70250892)
土谷 順彦 山形大学, 医学部, 教授 (70282176)
大山 力 弘前大学, 医学研究科, 特任教授 (80282135)
沼倉 一幸 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (90566415)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高脂肪 / 肥満 / 前立腺癌 / 腸内細菌 / LPS / 多価不飽和脂肪酸 / 癌進展 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
【方法】① PTEN KO前立腺癌発症マウスに、飽和脂肪酸に富むラード食(LD)と多価不飽和脂肪酸に富む魚油食(FOD)を投与した。② cDNAマイクロアレイと質量分析法を用いて前立腺内の網羅的RNA・蛋白発現解析を行い、前立腺への免疫細胞浸潤をフロサーサイトメトリーで評価した。③ 糞便の16S rRNAアンプリコン解析で、2群間の腸内細菌を比較した。④ また、前立腺生検患者における腸内細菌とメタボリックシンドロームおよび腫瘍浸潤免疫細胞の関連を評価した。 【結果】① LD群でFOD群と比較し有意に体重と前立腺重量が増加し、癌発症はLD群のみで認めた。② マイクロアレイのGO解析では、“immune system process”の変動が大きく、プロテインアレイにおいてLD群で変動の大きい上流分子としてTGFβ1、LPSが同定された。前立腺への免疫細胞浸潤はLD群で有意にFoxp3+ T細胞が多く、CD8+/Foxp3+ T細胞比が低値であった。③ 腸内細菌解析では、LD群でプロテオバクテリア門が増加し、特にイプシロン (ε-) プロテオバクテリア綱の変化が顕著であった。また、プロテオバクテリア門の割合と血清LPSに正の相関を認めた。抗生剤による腸内細菌除去でLD誘導の前立腺癌発症、血清LPS上昇、前立腺へのFoxp3+ T細胞浸潤が抑制された。④ ヒト前立腺生検患者で、糞便中ε-プロテオバクテリア綱の割合が高い症例は、有意に内臓脂肪が多く、血清脂質異常との関連を認めた。また、ε-プロテオバクテリア綱の割合と生検組織内のFoxp3+ T細胞数に正の相関を認めた。 【結論】ラード食は特定の腸内細菌増殖による腫瘍への免疫抑制T細胞浸潤を介して、前立腺癌発症・進展に関連した。食事介入やシンバイオティクスが腸内細菌・腫瘍免疫変化を介した新たな前立腺癌治療となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載した研究成果が得られたため。今後、このプロジェクトに関しては、論文化を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
私共は2022年にFABP4のKOマウスとTRAMPマウスを掛け合わせたマウスを樹立し、このマウスは浸潤性前立腺癌を高率に発生することを観察した。このマウスの系に高脂肪食と低脂肪食を与えて比較したところ、顕著の高脂肪食において前立腺癌進展が見られることが判った。今後は、この系を利用して、腸内細菌、さらには抗生剤投与などにより、進展の程度に変化があるか、どのような腫瘍微少環境やサイトカイン、ケモカインの変化やシグナル伝達の変化があるかを探索する。さらには便DNAの16SrDNAで菌種の相違を群間比較し、キーとなる腸内細菌叢の変化を同定する。 一方、本報告の成果で記載した、これまで確立したマウスのラード食、魚脂肪食とでのマウス前立腺癌モデルからさらに研究をすすめ、前立腺癌のallograftの腫瘍における重量、mRNA、タンパク、病理学的因子との関連や腫瘍微小環境の免疫細胞レパートリーを検討し、癌増悪および去勢合併症と関連する腸内細菌叢や糞便内代謝産物を同定する。上記により腸内細菌による前立腺癌発症進展の鍵となる腸内細菌叢や原因物質(病原体、代謝産物やサイトカイン)が同定されたら、上記で使用した同マウス前立腺癌モデルに去勢を行い、原因物質を阻害する薬剤を投与し、合併症予防および治療効果を判定する。 臨床検体を用いた治療反応予後を中心とした臨床因子と腸内細菌の関連検討を行うために、患者(正常対象、限局性前立腺癌、転移性前立腺癌)の糞便も含む組織バンクを用いて食生活、血液データ、遺伝子多型、治療効果、再発、予後を解析し、縦断的な糞便プロファイルとの関連を検討する。臨床検体による知見と1)のマウスモデルによる知見の相違を考慮し、候補腸内細菌、腸内代謝産物を同定することを目的とする。
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