2021 Fiscal Year Annual Research Report
上皮-間葉ネットワークにおける器官運命決定機構の解明とその応用
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21H03150
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉崎 恵悟 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10507982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 敏 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30264253)
宮崎 佳奈子 九州大学, 歯学研究院, 特別研究員(RPD) (30778840)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歯 / 発生 / 上皮-間葉相互作用 / 運命決定 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮-間葉相互作用は、器官の形態形成期において、ダイナミックな形態の変化を制御する上で重要な機構であるが、上皮と間葉どちらの細胞が形態形成の責任細胞であるかなど、詳細な機構は明らかとなっていない。本研究は、歯、肺、唾液腺、毛および腎臓などの上皮-間葉相互作用により形成される器官の運命決定機構を解明することを主な目的として研究を開始した。 本年度は主に、CAGE法およびscRNA-seq解析などの網羅的遺伝子解析を行い、データベースを統合することで歯の発生に関わる遺伝子の同定を試みた。scRNA-seqは個々の細胞の遺伝子発現を網羅的に解析できる利点がある一方、CAGE法によるトランスクリプトーム解析は、public data baseが充実しており、他の組織との比較など、特異的遺伝子の抽出に有利である。2つのデータベースを統合することで、歯に特異的な遺伝子群の同定に成功した。 本年度はさらに、将来の再生臓器の保存技術向上のため、マウス胎仔歯胚の器官培養法を用いて、保存法の検討を行った。様々な培養条件を検討した結果、25度の低温培養を行うことで歯胚発生の停止を行うことができた。CAGE解析を用いた網羅的解析の結果、低温培養下では細胞増殖期におけるG1/Sチェックポイントを乗り越えられずに細胞増殖が停止している可能性を発見した。さらに、本モデルを応用して、抗がん剤の副作用を回避するモデルを構築した。歯、唾液腺および毛などの上皮-間葉相互作用により形成される器官は、その旺盛な細胞増殖能により、抗がん剤による副作用が生じやすい部位として知られている。抗がん剤を投与している間、低温培養を行うことで、抗がん剤による歯胚形成阻害を抑制できることを発見した。この結果は、小児・AYA世代におけるがん治療の副作用および後遺症によるQOLの低下、それに伴う社会復帰の困難性に、新たな解決法を提案するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、トランスクリプトーム解析、scRNA-seq解析などの遺伝子発現網羅的解析手法を用いて、歯の発生初期に発現する遺伝子の同定に成功した。さらに、器官培養法を用いた新たなスクリーニングモデルの開発に成功した。本手法に関して、論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度スクリーニングした遺伝子群について、器官形成に重要な因子をスクリーニングするため、これまでに構築してきた上皮-間葉相互作用スクリーニングシステムを用いた候補遺伝子の検索を行う。
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Research Products
(22 results)