2021 Fiscal Year Annual Research Report
Time-resolved spin contrast variation for precise nanostructure determination
Project/Area Number |
21H03741
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
熊田 高之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (00343939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414579)
岩田 高広 山形大学, 理学部, 教授 (70211761)
廣井 孝介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究職 (70813715)
稲村 泰弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (80343937)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | スピンコントラスト変調 / 偏極中性子小角散乱 / 核偏極 / 時分割測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究デーマである時間分解スピンコントラスト変調小角散乱法を用いた実験は、2010年頃に研究用原子炉JRR-3の偏極中性子小角散乱装置SANS-Jに我々が開発した動的核偏極装置を組み込んで行っていた。当該年度では、大強度陽子加速器施設J-PARC物質生命科学実験施設MLFの中性子小角散乱装置TAIKANを用いて同実験を成功させることを目標に掲げ、成功にこぎつけた。しかし、装置的には時分割測定を実現できるようになったものの、本年度持ち込んだ高結晶化度ポリエチレン試料では、時分割測定を用いて当初期待していた散乱曲線の非相似的な変化、つまり偏極媒体となるニトロキシラジカルが局在した非晶相と、密度が高くニトロキシラジカルが入り込むことができない結晶相のあいだで生じると期待されていた水素核偏極度の差を観測することはできなかった。 それと並行して、無冷媒型動的偏極装置の開発に着手した。スピンコントラスト変調小角散乱実験においては高強度マイクロ波を極低温試料環境に照射するため液体ヘリウムの蒸発が激しい。J-PARC MLFのようなヘリウム液化施設のある実験施設ならともかく、研究用原子炉JRR-3の小角散乱装置SANS-Jでは同実験を行うことができない。その一方で、時分割スピンコントラスト変調小角散乱測定はSANS-Jが得意とするサブマイクロスケールのほうが観測しやすいことから本装置開発は必須である。当該年度では無冷媒型マグネットを立ち上げてマイクロ波を照射する態勢まで整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TAIKANをもちいた時間分解スピンコントラスト変調小角散乱実験は、我々が持ち込んだ偏極切替えデバイスからの信号をTAIKANのデータ計測システムに組み込むことに成功するなど、ハード面では装置を完成させたと言える。その一方で、TAIKANが測定する空間スケールは、以前測定したSANS-Jのそれに対して一桁ほど小さく、以前の測定に用いた高結晶化度ポリエチレン試料を測定しても、時分割測定に伴う非相似的な散乱曲線の変化を見ることができなかった。原因としてTAIKANが測定する空間領域では空間的に不均一に偏極度の変化する速度よりもスピン拡散機構により偏極ムラが均一化する方が早いためであると考えられる。 一方、無冷媒型動的核偏極装置の開発においては、マグネットとマイクロ波ユニットの組み合わせまでは行えたものの、偏極度を測定する水素NMR装置の開発が間に合わず偏極の可否を判断できない状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
TAIKANで測定する最大数十ナノメートルの空間領域では、以前にSANS-Jで行ったような偏極の立ち上がり時に生じる試料内の偏極ムラを測定することは難しいと判断した。そこで、同じ時間分解でも、複合材料試料中に弱めのマイクロ波を照射して偏極度をゆっくりと連続的に変化させながら測定したデータを特定時間ごとに分けた時分割解析する手法を開発する。従来の重水/軽水混合溶液を用いたコントラスト変調法では、測定する散乱の数だけ重水/軽水の混合比を変化させた試料を用意する必要があるのに対して、今回新たに提案する時分割解析スピンコントラスト変調法では、一つの試料からコントラストを連続変化させた無数の散乱曲線が得られることになる。次年度はその手法の確立に注力する。
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Research Products
(8 results)