2023 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア及び東南アジアにおける木彫像の樹種と用材観に関する調査研究
Project/Area Number |
22H00619
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 正人 成城大学, 文芸学部, 教授 (00257205)
能城 修一 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (30343792)
安部 久 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80343812)
西木 政統 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (90740499)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 木彫像 / オケオ遺跡 / フタバガキ科の樹木 / ホーチミン歴史博物館 / カントー博物館 / ケンジャン博物館 / アンザン省博物館 / 東京藝術大学大学美術館天王立像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナ禍の影響の懸念も少なくなったこともあり、海外調査を実施した。まず、2022年度の繰越しの予算で、8月10日(木)~17日(木)にタイでの調査を実施した(具体的な内容については2022年度の実績報告書に記載)。さらに本年度の予算で、12月23日(土)~29日(金)にベトナムでの調査を実施した。 ベトナムではダナン博物館の展示場及び収蔵庫にて木彫像や仮面、家具、船などの木製品を調査し、デジタルカメラによるマクロ撮影を行った。ホーチミン歴史博物館ではオケオ遺跡から出土した木彫像4躯について調査を実施し、デジタルカメラによるマクロ撮影を行った。さらに、オケオ遺跡を見学し、カントー博物館、ケンジャン博物館、アンザン省博物館にオケオ遺跡から出土した木彫像及び木製品が収蔵されていることを確認し、可能な限り調査を行い、デジタルカメラによるマクロ撮影を行った。各博物館では、研究員と面談し、今後の調査研究について意見交換を行った。その後の画像分析によって、オケオ遺跡から出土した木彫像の多くの樹種がフタバガキ科の樹木であることを確認できた。このフタバガキ科の樹木が船材として利用された可能性も想定され、タイにおけるチーク、ベトナムにおけるフタバガキ科の樹木が、日本のクスノキと似た機能をもって認識されていた状況が浮かび上がってきた。 国内調査では、5月19日(金)に東京藝術大学大学美術館で、天王立像、11月2日(木)に東京都奥多摩町所在の日原森林館で、倉沢大権現と社家に伝来した木彫像、2024年1月26日(金)に東京国立博物館で同館収蔵の木彫像についてそれぞれ調査を実施し、あわせて、デジタルスコープ、デジタルカメラによるマクロ撮影、近赤外分光法による樹種調査を実施した(日野森林館ではデジタルカメラによるマクロ撮影のみ)を行った。 さらに、木材学関係の学会で、研究成果を積極的に報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で海外調査に制約があり、研究がなかなか進展していなかったが、本年度はタイとベトナムでの調査を実施したことにより、ほぼ遅れを取り戻したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度の成果を受けて、海外調査を実施する。特に2023年度にタイで調査を行った際に、チェンマイに古い木彫像が多く伝えられ、チークも生育しているという情報を得たので、2024年度はチェンマイを中心に、チーク材活用の実態について調査する。また2023年度にベトナムで調査を行った際に、オケオ遺跡出土の木彫像の所蔵先がほぼ把握できたので、2025年度は所蔵先と連絡調整をした上で、より精度の高い調査を実施する予定である。 日本の7世紀の木彫像のうちクスノキ材製とされてきた像に関しての調査についてはまだ十分に実施していないため、可能な作例から樹種調査を継続して実施する。中国の古代から明時代までの木彫像の所在情報については、日本と中国のみならず欧米の博物館、美術館も視野に入れて、網羅的に収集しリスト作成を進めているが、それを継続するとともに、朝鮮、東南アジアの木彫像についても同様に国内外の情報収集を行なう。また、本研究グループの森林総合研究所のメンバーが推進する非破壊による近赤外分光法や揮発性有機化合物(VOC)分析、非接触で微細組織を観察可能な3D デジタルマイクロスコープ観察法も可能な限り実施する。なお、マクロレンズを利用したデジタルカメラによってもある程度の樹種調査が可能であることが、2023年度の調査で実証されたため、より精度の高い調査方法の確立も目指す。 東アジア及び東南アジアの木彫像に関する研究書や研究論文を外国の文献も視野に入れながら収集し、研究史や研究状況を十分に把握すること、同地域の船に関する文献史料を渉猟し、仏像との関係性について検討を加えることも継続して行う。適宜、メンバー全員による研究報告会を開催し、調査の成果を共有しながら、問題意識を深めていくよう努めたい。
|