2022 Fiscal Year Annual Research Report
会話における発話のアドレスの多様性:コーパスアノテーションに基づく実証的研究
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22H00654
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
傳 康晴 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70291458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高梨 克也 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (30423049)
岡本 雅史 立命館大学, 文学部, 教授 (30424310)
居關 友里子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, プロジェクト非常勤研究員 (70780500)
門田 圭祐 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (20962509)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コーパス言語学 / 相互行為言語学 / アノテーション / 発話アドレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、会話において発話を他者にアドレスする行為に見られる多様性を、会話コーパスへのアノテーションに基づく実証的分析により明らかにすることである。今年度は以下の成果を得た。 【課題A・B1】『千葉大学3人会話コーパス』を用いて、アドレス手段として用いられうる言語的・非言語的資源をリストアップした。その結果をふまえ、アノテーションのためのタグセットと作業方針を策定し、アドレス手段となりうる資源のアノテーションを試行した。これらの成果について、年度末のシンポジウムで報告した。 【課題B2】アドレス先の多様性の議論に関わる会話データについて、格闘技の集団練習や伴侶動物・子どもを含むデータに焦点を定め、事例収集を行った。また、発話のアドレス先と(その発話がなす)行為の向け先が二重化する事例について、行為の種類やアドレス手段(参与者への指示の形式等)の観点から検討した。 【課題B3】相互行為における「応答」と「反応」の違いに着目し、漫才・コント・教育系YouTube番組等の分析を行うとともに、小説における相互行為の表現方法について考察し、学会シンポジウムと社会言語科学会で報告した。また、不満表明場面における共通基盤構築のプロセスをモデル化し、その成果を国際会議で報告した。さらに、否定的評価をめぐる相互行為をアドレス性の観点から検討し、年度末のシンポジウムで報告した。 【体系化の試み】アドレスの理論的体系化に向けて、1990年代後半からの対話コーパス研究を中心にアドレスの分析的研究の今日までの歴史を振り返り、そこに見られる理論的混乱を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題Aに関して、アノテーションの方針が固まり、コーパスに実際に試行する段階にまで進んだ。課題B1~B3についても、具体的な事例に基づいた分析が進んでいる。さらに、これらを包括するような体系化の試みを開始し、理論的な観点から検討を始めた。以上のように、当初予定と比べておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題AとB1は密接に関連しており、同時に遂行するのが効率的であることがわかったので、課題Aの担当者・門田(および技術補佐員)に課題B1についても担当してもらう。また、当初、課題B1の担当であった高梨には、今後、理論的体系化の試みを課題として担当してもらう。 これらを踏まえた上で、今年度の研究実績に挙げた4つの項目について、引き続き推進する。とくに、次年度以降は、課題Aの実データへのアノテーションを本格的に進める。
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