2022 Fiscal Year Annual Research Report
戦後教育改革期における政官民アクターの三者関係に関する研究
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22H00971
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古賀 徹 日本大学, 通信教育部, 教授 (90297755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 七海 日本大学, 法学部, 准教授 (20816368)
冨士原 雅弘 日本大学, 国際関係学部, 教授 (30339238)
中澤 瞳 (齋藤瞳) 日本大学, 通信教育部, 准教授 (30756010)
高木 加奈絵 倉敷芸術科学大学, 学内共同利用施設等, 講師 (50880978)
布村 育子 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (70438901)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 戦後教育改革期の研究 / 政党・文部省・教員団体 / 労働運動 / 日本教職員組合 / 教員の政治的中立問題 / 史料のデジタル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
対象とする時期は1945年から50年代にかけての戦後教育改革期となる。従前の研究では占領期の新教育導入期や、新しい法制度実施過程が考察の対象となり、その制度導入時における混乱(課題)として、「政権に対立する教員組合」と語られることが多かった。それは「戦後史」として現在との連続性の問題から、まだ十分に「歴史研究」の対象となりえていないという限界があった。現存する人物、政党、教員団体などや運動における思想という問題もあり、おそらくタブー視されることもあったのではないか。 以上の問題を「資料」上の制約の問題として考えていくのが本研究の立ち位置となる。「政官民」に関する資料を収集し、デジタル化も行うことで、これからの戦後史研究発展にも寄与することができる。とくに日本教職員組合を中心とする「教員組織」側の資料は、これまでの研究で用いられたことがない。また、制度史として描かれてきたこれまでの歴史研究は、どうしても一面的で、偏った評価を産み出し、それ自体が「タブー視」をつくりだす構造になっていたと考えている。一方で「資料」の信頼性や価値を正確に評価することが大切であり、また研究の根拠としてもその公開可能性も考えていく必要がある。 資料をつかって、戦後史のこの時期における3つの事件を描き直す作業を進めている。①講和問題(1949年~52年)、②教育の政治的中立問題(1953年~54年)、③教員の勤務評定問題(1956年~59年)である。3つの事件に関する資料を中心に、日教組所蔵資料を撮影しデジタル化したものを共有しながら考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究スタートの年次に、やむを得ない事由により、検討課題①に関する資料探索、撮影、整理の作業(この分野について資料選別)がストップしたため、全体の計画についても遅れが生じていたが、その分を、3期・4期に予定していた作業を先取りして、デジタル化史料とアーカイブズの在り方に関する検討を進めることとなった。資料の公開ということで、実際にはわれわれ研究者は諸機関の「私文書」資料をみせていただいて、許可を得て研究に活用させていただくという立場になる。しかし、その「史料批判」(資料の評価)が重要な意味をもつ。「デジタル化」したものを「目録化」していくことで、諸機関(所蔵先)の資料保存や資料公開の在り方などをめぐる議論に貢献することもできると考えている。 このアーカイブズのための「目録化」という視点で研究報告書(資料編①)を作成・印刷した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、GHQ文書と教育刷新委員会関連の資料をまとめて、史料ベースでの検討会を進めていくことと、戦後史(政治史・労働運動)研究者を招いてのオンライン研究会などを進めていくこととなっている。まず資料については4月から野間教育研究所、国立国会図書館憲政資料室などを中心に各メンバーが探索をしていく。ゲストスピーカーを招いての研究会は、他の科研費グループとコラボレーションの形で進めさせていただく。 やむを得ぬ事由により遅れた①平和運動に関する資料調査も、年度当初からスタートして、本年度の資料撮影のリスト化もこの分野を中心に行う。②③については、野間研究所などの所蔵調査および関連文献の収集を進めていく。なお、アーカイブズとして「公文書綴」という1950年代までの「機関文書としての公的文書」とされたものを分析していく。このことは、おそらく文書形態を通して組織がつくられていくという一面があるのではないかという仮説検証につながっていくはずである。
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