2022 Fiscal Year Annual Research Report
Systematization Study of Terminology and Methodology of Subject Education - For the Construction of Academic Community
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22H01012
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
草原 和博 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (40294269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡出 美則 日本体育大学, スポーツ文化学部, 教授 (60169125)
影山 和也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60432283)
松浦 拓也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (40379863)
木下 博義 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20556469)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 教科教育学 / ターミノロジー / メソドロジー / 共通言語 / 学術共同体 / 事典・辞典 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3点を実施した。 第1に研究協力者を募り,研究組織を再構築できたことである。研究計画に則り「教科教育学コンソーシアム」に加盟する14の学協会に対して研究推進委員会を介して本科研への協力を依頼した。その結果全ての学協会から研究協力者を出していただくことができた。また年間5回の研究会を開催し,研究協議を進めることができた。研究目的の1つである教科教育学の学術共同体としての実態化・実質化を進めることができた意義は大きい。 第2に教科教育学のターミノロジー研究の基礎的なデータベースを作成できたことである。各学協会が編纂している辞書(事典・辞書・ハンドブック等)から各教科が重要と見做している用語のリストを提出いただき,そのリストを制作できた。また各教科の辞書に共通に所収されている用語と,共通に用いられながらも異なる意味・文脈で使用されている用語を抽出できた。これをもってターミノロジー研究の基礎的段階をクリアすることができた。 第3に具体的な用語について,教科別の意味構築の過程や背景について協議し,発表できたことである。研究協力者間の協議を経て,探究,批判的思考,理解,価値,単元等の重要用語を抽出し,教科間の定義の異同を検討することができた。さらに意味づけの違いが際立つ用語として探究,批判的思考,理解の3語を抽出し,本格的な意味検討を行った。その結果,意味の違いには,教科の歴史的・思想的・制度的背景と,目標特性が影響しているとの仮説が得られた。同時に,その違いを説明する分析フレームワークとして「教科の目標・内容・方法・評価の相互関係」を視点とすることについて合意が得られた。 このように教科・学協会別にターミノロジーが構築されてきた教科教育学に横串を設定し,共通言語の構築に向けて学術的対話を行うプラットフォームを構築することができたのが,1年次の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に,研究会を継続的に開催し,教科教育学コンソーシアムのシンポジウムで成果を中間報告できたことである。短期間ながらも一定のまとまった成果を出し,公表できた意義は大きい。 第2に,ターミノロジー研究の基礎的データベースを構築できたことである。教科別に編纂されている辞書類を包括的に収集し,所収された用語を集約できた意義は大きい。本学問領域ではじめての成果と推測している。 第3に,分析フレームワークについて合意が得られたことである。上述のように用語の意味の差異,多様性を確認しつつ,学術共同体として議論の枠組みを共有できることが再確認できた意義は大きい。 第4に,海外の教科教育学会との対話を行うことができたことである。欧州の研究者内でも,各教科が独自の言語体系を有していること,またそれが教科教育学の学術的地位や政策的インパクトを低下させているとの認識が認められた。また本科研の方針に対して一定の賛同が得られた意義は大きい。 これらの点から,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の研究を進める。 第1に,ターミノロジー研究を進展させることである。6月,9月,11月,2月と年間4回程度の研究会を開催し,新たな用語の意味調査を遂行する。2年間で10個程度の用語の精査を行い,教科教育学事典の編纂に向けた準備を進めたい。調査用語の数をむやみに増やすことはせず,用語の意味の差異を構築している背景の解明,またその背景に共通にみられる要因・規範等の解明に重点を置きたい。 第2に,メソドロジー研究を開始することである。年間4回開催される研究会を利用し,継続的に協議を進める。各学協会を代表する研究協力者には,各学協会の学会賞等を受賞し注目されている研究論文を選考いただき,同論文の方法論上の特性を解明する。それを通して,各学協会が評価しているメソドロジーの体系と,他の学問分野との比較から浮かび上がるメソドロジーの共通特性とバリエーションを究明したい。 第3に,海外の研究者を招聘した(または日本の研究者を海外派遣した)研究協議を進めることである。現時点では9月の招聘(または派遣)を予定している。欧州には,個別教科を越えて教科の思想・カリキュラム・指導法・評価を究明する研究グループが台頭している。とくに問題意識を異にするドイツ(学術共同体の追究),オーストリア(教師教育の改善),イギリス(大学の研究力強化)等の取組を参照し,日本の教科教育学は何を基盤に学術共同体を構築していくべきかの議論を活性化させたい。 これらの研究活動を通して,2024年3月には第2回の成果報告会を開催する。教科教育学コンソーシアムの年次大会に合わせて報告できることを目指す。あわせてコンソーシアム加盟学協会の会員に本科研の成果を還元する方法の検討も進める。現時点では,ホームページ等を含むソーシャルメディアでの発信を強化することを検討している。
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Research Products
(5 results)