2022 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道結合系イリジウム酸化物の逐次新奇相転移と電流誘起交差相関物性の解明
Project/Area Number |
22H01183
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松平 和之 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40312342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網塚 浩 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40212576)
筒井 智嗣 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (70360823)
中村 和磨 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60525236)
長谷川 巧 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 准教授 (20508171)
山地 洋平 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (00649428)
速水 賢 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20776546)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 電気トロイダル / イリジウム酸化物 / 電流誘起 |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマA 逐次相転移の微視的自由度の解明 低温の磁気秩序の異方的な相図および磁気異方性を明らかにした。c面内が磁化容易方向で,磁気モーメントが面内異方性を持っていること,磁気秩序が磁場印加でc軸方向で増大し,c面内方向で7Tでも10%程度しか低下しない。これらの特徴は磁気多極子あるいはクラスター磁気多極子の可能性を示唆している。非磁性の105K相転移の熱膨張測定から,この相転移における格子系の変化を初めて明らかにした。多結晶試料の線膨張系数に5×10^-7の非常に小さな変化を見出した。電気抵抗の高圧力効果を調べた。電気抵抗は圧力印加により抵抗値は小さくなり,相転移は0.81K/GPaで上昇することがわかった。この変化は熱膨張測定からの予測とほぼ一致する。KEK-PFでのX線回折で中間相の結晶構造の空間群がR3であることを明らかにした。また,超格ピークの積分強度の温度依存性が,鏡映対称性を破る原子変位がある場合で,説明できることを明らかにした。速水は2つの秩序相に対して群論および多極子理論を用いた解析を行い、中間温度相がクラスター電気トロイダル双極子秩序、低温相がクラスター磁気トロイダル四極子秩序に対応することを明らかにした。 テーマB 電流誘起交差相関現象の解明 松平と長谷川は,電流印加下でのラマン散乱測定を行い,酸素の振動モードにおいて,自己発熱によるフォノンモードの変化とは異なる電流印加の効果によるスペクトル変化を見出した.これは酸素の結合の変化や局所構造変化に対応し,非線形伝導の微視的な起源と考えられる.また,赤外分光による電子構造の研究を行った。電気抵抗の温度依存性から熱活性型を仮定し推察されるエネルギーギャップに対応した光学伝導度にはギャップはないことがわかった。第一原理計算による光学伝導度の結果と比較考察し,電子構造の概略を得た。これらはソフトギャップと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマA 逐次相転移の微視的自由度の解明 105Kの非磁性相転移が,回折実験により結晶構造の空間群がR3であることを明らかにするとともに,超格子反射の積分強度の温度依存性からも電気トロイダル秩序であることを示しており,複数の実験結果から電気トロイダル秩序であることを確認できた. また,電気抵抗の高圧力効果から電気抵抗は圧力印加により抵抗値は小さくなり,相転移は0.81K/GPaで上昇することがわかった.この変化は熱膨張測定からの予測とほぼ一致する結果も得られた. テーマB 電流誘起交差相関現象の解明 ラマン散乱から酸素が電流誘起物性に関係する確証が得られた.また光学伝導度についても,第一原理計算との比較により,電子構造の理解が深まった.
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Strategy for Future Research Activity |
テーマA 逐次相転移の微視的自由度の解明 磁気秩序相の秩序変数の解明が必要であり,放射光の種々の測定を行う.そのための申請も行っている.機構解明については,これらの申請が採択され,実験結果が得られれば,解明へと近づくと考えている.また,放射光X線回折のデータから構造パラメータの決定を進める.非常に構造変化が小さく難航しているが,非常に重要である.交差相関応答による相転移の検出も理論提案されており,その測定についても予備実験を行う. テーマB 電流誘起交差相関現象の解明 電流印加による格子定数の変化をX線回折で調べる.また,電流電圧特性の履歴現象についても,AC電流印加の周波数依存性を詳細に調べることで,緩和時間などを明らかにする.
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Research Products
(15 results)