2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01239
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
早川 岳人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (70343944)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
余語 覚文 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (50421441)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | レーザー核物理 / s過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄より重い元素は遅い中性子捕獲反応と急速な中性子捕獲反応過程で生成された。しかし、励起状態で核反応が発生する。またr過程では不安定核の中性子捕獲反応断面積が必要である。そのため、励起状態の原子核や、不安定核の中性子捕獲反応断面積の計測が求められている。近年、急速に発達しているレーザー駆動粒子では、フェムト秒からナノ秒の時間幅で高輝度かつ、連続エネルギーのパルスを生成できる。これらを用いて中性子による宇宙核物理研究をすすめる。大阪大学のレーザー科学研究所のLFEXレーザーを用いて中性子生成実験を行った。LFEXから供給された大強度レーザーを約10^18W/cm^2の非常に強い集光強度で、水素を重水素に置換した固体ポリエチレンターゲットの表面に集光しプラズマを生成した。レーザーパルスによってポンデロモティーブ力等による粒子加速機構によって、電子がプラズマ中で加速され放出された。加速された電子がターゲットから飛び出した瞬間に、マイナスの電荷の電子とプラスの電荷のプラズマの間に極めて強い静電場が形成され、この静電場によって陽子及び重陽子の正イオンが陽子については約30MeV/u、重陽子については約10MeV/uまで加速された。このポリエチレンターゲットの直後にベリリウムターゲットを設置し、p+Be反応やd+Be反応で中性子を生成した。生成された中性子のエネルギーは約8mの距離に設置した液体シンチレーション検出器を用いて飛行時間計測法で計測した。中性子のエネルギーは約1MeV前後にピークがあり、中性子エネルギーが増加するにつれて減衰した。また、低エネルギーの中性子を生成するためにモデレーターをベリリウムターゲットの背後に設置し中性子の減速を行った。その直後に試料を設置し、照射後に試料を鉛と銅で遮蔽した測定箇所においてGe半導体検出器でガンマ線の計測を行い中性子量の評価を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪大学レーザー科学研究所のLFEXレーザーを用いてレーザー中性子生成実験の最初の実験を行っており、次年度以降の実験の見通しが立っているためである。これらの実験では、実際にレーザーによる中性子生成及び、中性子のエネルギー計測を行っており、また、中性子入射反応が発生したことをガンマ線計測で確認している。また、今年度、導入した検出器も実験で試験している。Ge半導体検出器の電気冷凍機を導入し、阪大のレーザー実験には納品が間に合わなかったため、関西光科学研究所のJ-KAREN-Pレーザーによるイオン加速実験に用いた。加速した陽子及び炭素イオンによる核反応による生成物を10以上の計測に用いて、安定性が十分あることを確認した。そのため、レーザー中性子実験にも問題なく使えると期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
大阪大学レーザー科学研究所のLFEXレーザーを用いてレーザー駆動中性子の生成を行い、最適化したモデレーターを用いて中性子のエネルギー分布を宇宙核物理学で重要なエネルギー分布に調整する。遅い中性子捕獲反応過程(s過程)は、主に低質量(太陽質量の0.6~3倍)の漸近巨大分枝星で発生するが、質量が大きい巨大質量星の進化の過程でも、弱いs過程が発生する。前者では、平均温度(エネルギー)が8~30keVであるが、後者では最大100keVに達する。また、近年の隕石分析によって高エネルギー宇宙線の核破砕反応で生成された中性子による核反応の痕跡が見つかっている。これらを再現するために、通常の水素を多量に含む物質ではなく、ホウ素や炭素を主な物質として減速材を最適化する。そのため、現在すすめているシミュレーション計算をさらにすすめ、より優れた形状を求める。そのモデレーターを中性子発生のためのベリリウムターゲットの後段に導入し、生成した高エネルギー中性子(平均エネルギー1MeV程度)の減速を行い、上記の宇宙核物理学で重要な平均エネルギーを有する連続分布にスペクトルを調整する。中性子のエネルギー計測は、高エネルギー中性子については液体シンチレーション検出器を用いた飛行時間計測法による測定を行う。低エネルギー部分については、Li-6グラスシンチレーター検出器による飛行時間計測法を行う。さらに、金などの標準的に用いられる物質に中性子を照射し、中性子捕獲反応及び、高エネルギー中性子の(n,2n)反応で生成された不安定同位体のベータ崩壊にともなうガンマ線計測を行いエネルギースペクトルの検証を行う。半減期の2倍程度の測定を行う。長時間の計測については、既に導入し試験した電気冷凍機で冷却したGe半導体検出器を用いて測定を行う。
|
Research Products
(7 results)
-
-
[Journal Article] Laser-Driven Neutron Generation Realizing Single-Shot Resonance Spectroscopy2023
Author(s)
A. Yogo , Z. Lan , Y. Arikawa , Y. Abe , S. R. Mirfayzi , T. Wei , T. Mori , D. Golovin , T. Hayakawa , N. Iwata , S. Fujioka , M. Nakai , Y. Sentoku , K. Mima , M. Murakami , M. Koizumi , F. Ito , J. Lee , T. Takahashi , K. Hironaka , S. Kar , H. Nishimura , R. Kodama
-
Journal Title
Physical Review X
Volume: 13
Pages: 011011
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Feasibility study of laser-driven neutron sources for pharmaceutical applications2023
Author(s)
Takato Mori , Akifumi Yogo , Yasunobu Arikawa , Takehito Hayakawa , Seyed R. Mirfayzi , Zechen Lan , Tianyun Wei , Yuki Abe , Mitsuo Nakai , Kunioki Mima , Hiroaki Nishimura , Shinsuke Fujioka , Ryosuke Kodama
-
Journal Title
High Power Laser Science and Engineering
Volume: 11
Pages: e20
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Non-destructive inspection of water or high-pressure hydrogen gas in metal pipes by the flash of neutrons and x rays generated by laser2022
Author(s)
Tianyun Wei, Akifumi Yogo, Takehito Hayakawa, Yasunobu Arikawa, Yuki Abe, Maiko Nakanishi, Seyed Reza Mirfayzi, Zechen Lan, Takato Mori, Kunioki Mima, Shinsuke Fujioka, Masakatsu Murakami, Mitsuo Nakai, Hiroaki Nishimura, Satyabrata Kar, Ryosuke Kodama
-
Journal Title
AIP advances
Volume: 12
Pages: 045220
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Thermal neutron fluence measurement using a cadmium differential method at the laser-driven neutron source2022
Author(s)
Takato Mori , Akifumi Yogo , Takehito Hayakawa , Seyed R. Mirfayzi , Zechen Lan , Tianyun Wei , Yuki Abe , Yasunobu Arikawa , Mitsuo Nakai , Kunioki Mima , Hiroaki Nishimura , Shinsuke Fujioka , Ryosuke Kodama
-
Journal Title
Journal of Physics G: Nuclear and Particle Physics
Volume: 49
Pages: 065103
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
[Presentation] 176Lu宇宙核時計の半減期の矛盾問題2023
Author(s)
早川 岳人, 巽 湧太, 余語 覚文, 有川 安信, 森 隆人, 藍 澤塵, 韋 添允, 勝 常也, 中井 光男, 三間 圀興, 安部 勇輝, 蔵満 康浩, 藤岡 慎介, 千葉 敏, 兒玉 了祐
Organizer
日本物理学会 2023年春季大会