2023 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブの分子レベルでの欠陥ドープ構造制御と近赤外発光特性の開拓
Project/Area Number |
22H01910
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白木 智丈 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10508089)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 欠陥 / 近赤外光 / 分子修飾 / ドープ / センサー / タンパク質 / バイオセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、局所化学修飾単層カーボンナノチューブ(lf-SWCNT)の近赤外発光が、周囲の誘電環境の違いに応答して敏感な波長変化を示す知見を得たことから、その特性を基にlf-SWCNTを用いた新たなセンサー開発に取り組んだ。ここでは、タンパク質等の生体高分子の検出・識別を対象とするセンシング機能の開拓を目指した。タンパク質吸着によるlf-SWCNTの近赤外発光波長シフトをセンサーの読み出しシグナルとして利用するために、初期検討として生体において特異的かつ強固な相互作用として知られるアビジン-ビオチン相互作用を用いた。ビオチンを修飾したlf-SWCNTは、ニュートラアビジンの濃度に応じて近赤外発光が波長シフトし、その応答挙動は構成アミノ酸残基の異なるストレプトアビジンやアビジンで変化したことからアビジン誘導体の構造の違いを識別できることが分かった。さらに、固体のフィルムデバイス化によって、検出シグナルの増強にも成功した。この知見を基に、生理活性タンパク質である血清アルブミン(SA)センサー開発を行った。SAは糖尿病などの疾患に関わるバイオマーカーとして知られる重要な検出対象物質である。ここでは、SAとの強固な相互作用を示す長鎖脂肪酸をlf-SWCNTの修飾サイトに導入した。このlf-SWCNTの近赤外発光は、ウシ血清アルブミンの濃度に応じて波長シフトを示し、マウスやヒト由来のSAも同様にセンシング可能であることがわかった。更に、本lf-SWCNTはウシ胎児血清や糖尿病マウスから採取した尿サンプル中でもセンサー機能を発現したことから、体液を用いた近赤外診断ツールとして利用可能なことが明らかとなった。上記に加え、lf-SWCNTの修飾サイトでは、その化学構造の違いに応じて吸着する高分子との特異的な相互作用が発現することを見出し、ナノ界面の状態や特性を変調出来うる新たな知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、lf-SWCNTの近赤外発光が示す特異な環境応答性の独自知見を発展させてセンサー材料の創出に新たに取り組み、タンパク質を検出対象としたlf-SWCNTセンサーを開発することに成功した。その中では、疾患に関与するバイオマーカーの体液中でのセンシングが可能なことも示され、実際に医療やバイオ分野での利用が期待される成果を開拓することができ、非常に大きな研究の進捗が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度においても引き続き、予定している実験計画ならびにこれまで得られた独自知見をさらに発展させて、より詳細なlf-SWCNTの物性解明やさらなる機能化、応用展開を行っていく。
|
Research Products
(26 results)