2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of MALDI glycotyping technology targeting a wide range of biological samples.
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22H02191
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
比能 洋 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (70333333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 純子 (仁尾純子) 長崎大学, 高度感染症研究センター, 准教授 (70447043)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | グリコタイピング / MALDI / 糖タンパク質 / 直接解析 / O抗原 / LPS / 1コロニー / 同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は糖タンパク質を対象とした直接解析条件の改良をまず実施した。その結果、1,5-diaminonaphtalen (DAN)を2,5-dihydroxybenzoic acid (DHB)に添加し、少量のアルカリ金属を添加したマトリックスがf mol量の無処理糖タンパク質に対し、高感度N-結合型糖鎖選択的切断と糖鎖選択的イオン化を実現できることを見出した。また、このマトリックスはウズラおよび鶏の卵白から直接N-結合型糖鎖のパターン解析が可能となることを実証した。さらに、この反応系をバクテリアの糖鎖の直接解析へと応用することを検討したところ、カラムやHILIC操作なしで、1コロニーの大腸菌から1時間以内にそのO抗原糖鎖パターンを解析できることを見出した。さらに、糖鎖亜型が報告されているO1型大腸菌とO6型大腸菌を購入し、そのO抗原糖鎖パターンを調査したところ、調査したO1型大腸菌はO1Aと呼ばれる糖鎖亜型であり、O6はJannsonらにより報告された糖鎖亜型であることを明確に示すスペクトルが確認された。これまで糖鎖亜型の確認には大腸菌の大量培養、LSPのフェノール抽出、O抗原の弱酸加水分解、および数段階のカラム操作を経てmg単位のO抗原多糖を分離し、これをNMRにより解析する必要があった。これに対し、我々が見出した技術ではいずれも寒天培地に蒔いた菌株から1コロニーをPCRチューブに入れ、簡単なチューブ内処理によりそれぞれのO抗原を同定できることを実証した。また、O1、O6、O157抗原を有する3種の大腸菌を混合して寒天培地に蒔き任意の10コロニーを選択し、解析したところ、それぞれのコロニーのO抗原を並列操作で同定できることを実証した。さらに、1コロニーを分割しそれぞれからタンパク質解析による菌種同定と糖鎖解析によるO抗原同定を並行して実施できることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生物種の分類技術は生命科学、医学、および疫学調査において鍵となる技術である。これまで、微生物の分類は様々な染色や成長条件の比較検討を組み合わせた生化学試験、抗体ライブラリを用いた抗原試験、オリゴヌクレオチドライブラリを用いたPCR試験、ゲノム配列解析など、いずれも時間とコストのかかる作業であった。リボソームタンパク質を対象としたMALDIバイオタイピング技術はその迅速性とプローブ不要の低コストおよび汎用性から微生物同定のゲームチェンジ技術として急速に普及してきた。一方、菌類のサブタイプは特に病原菌や産業上の有益菌を区分するうえで重要な指標として利用されているが、現在のMALDIバイオタイピング技術では種内の分類や近縁種の区別が困難であった。これに対し、我々が見出したO抗原バイオタイピング技術は微生物の疫学調査査、様々な生体成分糖タンパク質を対象としたMALDIタイピングに次世代の変革をもたらすものになると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
この基盤B研究では糖鎖を対象としたMALDI法による迅速バイオタイピング法にこだわり、より広範な生物種や対象サンプルに対するタイピング法の拡大を実施する。また、先述のO刻限タイピングや糖タンパク質の直接タイピング技術のように、産業応用や安全保障への応用が期待される技術は精力的に展開プロジェクトとして別途検討を進める。
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