2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of spatiotemporal dynamics and fates of RANKL-expressing mesenchymal cells
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22H03195
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 一男 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (00436643)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨代謝 / サイトカイン / 破骨細胞 / 間葉系細胞 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
骨の恒常性は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスにより維持される。RANKLは破骨細胞分化に必須のサイトカインであり、膜型と可溶型の二種の形態をとるが、研究代表者はこれまで破骨細胞前駆細胞と膜型RANKLを産生する間葉系支持細胞との直接的な細胞間接触が必要であることを明らかにしてきた。一方、RANKL供給源はライフステージに伴い変化し、肥大軟骨層軟骨細胞、骨芽細胞系細胞、脂肪細胞前駆細胞、骨細胞など多岐に亘るが、その詳細な発現制御機構やRANKL発現細胞の位置的制御機構は不明である。本課題では、遺伝子改変マウスの技術を駆使し、間葉系支持細胞におけるRANKLの空間的発現解析技術を確立させ、RANKL発現の時空間的制御機構と、RANKL発現間葉系細胞の細胞性質と運命経路の解明を目指している。当該年度では、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を用いて、RANKLレポーターマウスを作製に取り組んだ。またRANKL発現制御機構を明らかにすべく、ChIP-seqデータベースを元に各種のRANKL発現間葉系支持細胞のRANKL遺伝子座におけるエピゲノム解析を実施し、転写開始点上流に複数のH3K27acレベルの高いエンハンサー領域が存在することを見出した。関節リウマチの骨破壊では滑膜線維芽細胞がRANKLの産生源であるが、滑膜線維芽細胞特異的なエンハンサー領域(E3領域)を見出し、滑膜線維芽細胞では転写因子ETS1がE3領域を介してRANKL発現をコントールすることが確認され、骨破壊型滑膜線維芽細胞の運命決定に関する成果に繋がった (Yan et al, Nat Immunol, 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RANKL遺伝子の下流に緑色蛍光タンパク質、もしくはマーカー遺伝子を導入したレポーターマウス2種を作製し、胸腺・脾臓T細胞の初代培養系を用いてレポーター遺伝子発現とRANKL発現との相関性が認められ、RANKLレポーターマウスとしての実用性が確認できている。また、これらのRANKLレポーターマウスを用いた組織学的解析も順調に進んでおり、来年度以降も計画通りに進められる状況にある。さらに既存のChIP-seqデータベースを用いて、骨芽細胞、T細胞、B細胞、滑膜線維芽細胞など細胞種のRANKL遺伝子座におけるエピゲノム構造を調査したところ、滑膜線維芽細胞に特異的にH3K27acレベルの高いエンハンサー領域(E3と呼ぶ)が存在することがわかり、さらに転写因子ETS1がE3領域を介してRANKL発現を誘導すること、関節リウマチにおける滑膜線維芽細胞の運命決定にETS1が必須であることを明らかにすることができた (Yan et al, Nat Immunol, 2022)。RANKL発現制御機構の解析からETS1の同定に至ったが、興味深いことにがんや腸炎などの組織リモデリング型線維芽細胞にもETS1が重要であることが判明し、ETS1が様々な状況下における組織リモデリング型線維芽細胞の運命決定因子であることも明らかとなった。以上より概ね計画通りに解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
RANKLレポーターマウスを用いた組織学的解析を実施し、RANKL発現間葉系支持細胞と破骨細胞のほか、類骨形成面、活性型紡錘形骨芽細胞、脂肪細胞、血管、神経などとの位置的関係性を調査する。また、RANKL発現間葉系細胞を用いた網羅的遺伝子解析を元に、RANKL発現間葉系支持細胞に特徴的な遺伝子発現を探索し、RANKL発現細胞の形成に重要なシグナル伝達経路や転写制御機構を精査する。さらにRANKLレポーターマウスを用いて、OVXモデル、低カルシウム食、高用量ステロイド投与による骨粗鬆症や、関節リウマチモデルにおける全身性骨粗鬆症を検討し、病的状況下におけるRANKL発現間葉系細胞の動的変化を検討する。以上の解析から、生理的・病的RANKL発現細胞の細胞性質の差異を見出し、各種のRANKL発現間葉系細胞の運命経路に関わる分子機構の解明に繋げる。
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Research Products
(19 results)