2022 Fiscal Year Annual Research Report
骨軟部腫瘍全ゲノム解析データに基づく遺伝子異常の機能解析と治療標的の同定
Project/Area Number |
22H03209
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
平田 真 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (50401071)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清 茜 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (30941512)
小田 智世 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 臨床検査技師 (60941549)
松田 浩一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90401257)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 骨軟部腫瘍 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はAMED革新がんの全ゲノム解析プロジェクトで解析対象とした症例の腫瘍組織検体等の生体試料を用いてさらなるマルチオミックス解析を実施することで、全ゲノム解析プロジェクトで構築されるがんゲノム解析データベースに付随するマルチオミックスデータを取得し、悪性骨軟部腫瘍のゲノム医療の発展に向けたより詳細な網羅的・多層的な統合ゲノムデータベースを構築することである。本研究提案では、悪性骨軟部腫瘍のWGS解析、RNA-Seq解析結果に基づいて、症例を選定し、MinION/PromethIONによるロングリードWGS解析、DNAメチル化解析、ATAC-Seq解析などのエピゲノム解析、LC-MS等によるプロテオーム解析、メタボローム解析や空間的遺伝子発現解析(Visium)等を駆使し、網羅的・多層的なマルチオミックス解析を進める。2022年度は以下の研究計画を推進した。 ① 医療機関・解析機関ネットワーク維持・拡充と試料収集・管理: 2022年6月1日に全体班会議を行い、研究の進捗と今年度の予定、今後の研究方針について情報共有と協議を行った。また、本研究に関わる研究者と月1回の定例会議を開き、進捗管理を行った。全ゲノム解析に関わる症例を中心に臨床情報の収集を行った。 ② WGS解析結果に基づく網羅的・多層的マルチオミックス解析: 全ゲノムシークエンス解析プロジェクトで先行して得られるWGS、RNA-Seq解析データをもとに、検出された遺伝子異常に応じて症例を選定して統合的ゲノム解析を進めた。WGS解析データを中心に組織型横断的ゲノムプロファイリングを行い、各組織型において特徴的な遺伝子異常をまとめた。一部の症例においてEPICアレイによるメチル化解析およびNTペアでのロングリードシークエンス解析を実施し、このデータを受領した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の元となるAMED革新がんにおけるゲノム解析データのうち、WGS解析データは2022年度中に受領し、その解析に着手することが可能であった。本解析結果に基づき、プロファイリング解析は概ね予定通りに進められている。先行解析分と併せて600症例を超える症例についての全ゲノム解析データのとりまとめを進めている。対応する臨床情報の収集についても概ね進められており、特に組織診断のもととなる病理学的診断については各症例の病理診断時のスライドを取り寄せ、一部は未染プレパラートも受領して、中央病理診断担当の病理医と定期的なミーティングを行い、診断の確定や診断に疑義のある症例の洗い出しを行った。今後臨床情報とゲノム解析のデータを統合した解析も行う予定である。 一方でRNA seq解析については先行解析分の症例のみの解析に着手可能であった。AMED革新がん本体分のRNA-seq解析結果は解析班より2022年度末に受領した。今後、この解析結果に基づいて融合遺伝子、遺伝子発現解析なども並行して実施する予定としている。また、同様にメチル化解析データ、ロングリードシークエンス全ゲノム解析データも年度末に受領した。このため、当該年度においては、データ解析まで進めることはできなかった。これらのデータについては今後、受領データのクオリティの確認やロングリードシークエンス解析については、FASTQファイルの生成から実施し、その後の2次解析を実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
WGS解析、RNA seq解析等のデータ解析を引き続き実施すると共に、2022度に実施したロングリードWGS解析、DNAメチル化解析のデータ解析を継続する。また、これらに関連する症例の臨床情報収集も継続的に実施する。さらに、これらの解析結果を踏まえてATAC-Seq解析、プロテオーム解析、メタボローム解析等を検討し、網羅的・多層的なマルチオミックス解析を進める。 ① 医療機関・解析機関ネットワーク維持・拡充と試料収集・管理: 研究事務局において共同研究機関のサポート、プロトコールの統一化、登録症例のデータベース化を進める。また班会議を開催し、試料収集や研究進捗状況の報告、新規研究・共同研究の提案などを審議する。さらに全ゲノム解析の対象とした組織型を中心に検証用の症例登録、試料収集を継続する。 ② WGS解析結果に基づく網羅的・多層的マルチオミックス解析: 全ゲノムシークエンス解析プロジェクトで先行して得られるWGS、RNA-Seq解析データをもとに、検出された遺伝子異常に応じて症例を選定して統合的ゲノム解析を進める。2022年度において実施した一部解析結果に基づいて、今後も統合的ゲノム解析としてはDNAメチル化解析やATACSeq解析などのエピゲノム解析やロングリードシークエンス解析、メタボローム解析等を検討する。一連の解析結果はWGS、RNA-Seq解析データベースと突合し、骨軟部腫瘍の統合的ゲノムデータベースの構築を進める。 ③ 新規独立検体を用いた検証解析: WGS解析や②の解析を通じて高頻度に同定され、治療標的としても有望であると考えられる遺伝子異常が検出された場合、①の体制の中で別途独立検体の収集を行い、検出された遺伝子異常に応じた検証解析を行う。この場合は網羅的解析ではなく標的を絞った解析を実施し、効率的かつ感度・特異度を考慮した個別の解析を実施する。
|