2022 Fiscal Year Annual Research Report
Induction of insulin secreting cell via human iPS cells derived from deciduous teeth using a novel organ culture method
Project/Area Number |
22H03277
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
齊藤 一誠 朝日大学, 歯学部, 教授 (90404540)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 正宏 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 共同研究員 (30287099)
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
照沼 美穂 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50615739)
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30448568)
薗村 貴弘 朝日大学, 歯学部, 教授 (40347092)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 1型糖尿病 / 膵幹細胞 / iPS細胞 / iTS細胞 / 乳歯 / 歯髄細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病(Type 1 diabetes, T1D)は、膵島に存在するインスリン産生細胞(β細胞)に対する自己免疫疾患である。T1D発生率は国によって異なり、本邦では1年間の新規発症例は約500人とされ、国指定の小児慢性特定疾病である。 一方、「再生医療におけるiPSCから特定の分化組織・細胞を取得する試み」は国内外とも盛んで、本邦では2014年理研にて世界初、iPSC由来網膜細胞の加齢黄斑変性患者への移植手術が行われた。2018年には難治性重症心不全、パーキンソン病、脊髄損傷への臨床研究実施計画も了承された。しかし、国内外とも①潜在的な奇形腫形成(造腫瘍性)の問題と②目的分化細胞への効率的な分化誘導系の確立は依然停滞し(問題点)、再生医療現場では未だに生体由来の組織性幹細胞(tissue-specific stem cell, TSC)が多用されている。 iPS細胞は体性細胞から樹立され、臨床応用への研究・開発が活発に行われている。我々は侵襲なく取得できるほぼ唯一の生体組織である脱落乳歯の歯髄細胞(HDDPC)由来iPS細胞を用い、世界に先駆けて人工的な膵幹細胞(iTSC-P)を樹立し、これをヌードマウス膵臓内に細胞移植し、造腫瘍性のないインスリン分泌性細胞の長期維持に成功した。この成果により、1型糖尿病患者の乳歯からiPS細胞を経由したiTSC-Pを樹立し、1型糖尿病モデルマウスへの移植により、血糖値改善が可能となる機能的なインスリン分泌β細胞の再生が可能となる。そこで本研究では、iTSC-Pを基盤とし、1型糖尿病患者への自家移植可能な安全且つ機能的な新規β細胞分化誘導系の開発を目指す。本手法はバイオマスとしての乳歯の有用性を証明するだけでなく、患児の乳歯から他臓器へiTSCを利用したテーラーメイド型再生医療にも活用でき、高い汎用性が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らはマウス膵由来細胞に山中4因子導入を行い、部分的リプログラミングの結果、体細胞とiPSCの中間細胞の樹立に成功し、これを”induced tissue-specific stem cell(iTSC)”と命名した。一方、iTSCを用いた糖尿病への再生治療を目指し、我々はⅠ型糖尿病(T1D)モデルマウス由来膵細胞からβ細胞の前駆細胞であるiTSC(iTSC-P)の樹立に成功している。 本研究の初年度としては、膵β細胞強制分化誘導用プラスミドの構築とiPSCへの遺伝子導入、続く、NSCへの転換を行った。HDDPCから樹立・転換したNSCにおいて膵細胞への分化方向を限定させるため、膵特異的因子であるneurogenin3(NGN3)、PDX1、MAF bZIP transcription factor A(MAFA)遺伝子を搭載するベクターpNPMTP(既に入手済み)を改変し、これら遺伝子を搭載したpiggyBac(PB)系トランスポゾン(pT-NPMTP)を構築する。なお、我々はPB系トランスポゾンを用いた遺伝子導入系をヒトおよびブタ細胞に適用し、その有効性を確認している。 取得したpT-NPMTPを乳歯由来のHDDPC-iPSCにNeon Transfection System(Invitrogen)にて遺伝子導入し、更にiPSCからNSCへの転換は、Inadaらに習い、NSC転換用薬剤含有培地にて継代培養した。この過程で台地状であったiPSC colonyは、ドーム型colonyに転換する。ヒトiPSCは本来、SSEA-1抗原を発現しないが、NSCに転換すると、SSEA-1抗原を発現するようになるので、ドーム型colonyがSSEA-1陽性と判断されれば、NSCと判断される。現在は、NSCの幹細胞特性等を評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
iTSC-Pの特徴は、①奇形腫形成に抵抗性を示し、②in vitroで効率的にグルコース応答性インスリン分泌性β細胞様細胞に分化させることができ、人為的に糖尿病を発症させたヌードマウスへのiTSC-P移植実験から、③iTSC-P移植は、数日間の血糖値改善が可能であると考えられる。本研究では乳歯由来の材料を用い、効率良くβ細胞を作製し、最終的にはその自家移植によるT1D治療法の開発を目的とした。 今年度には、iTSC-Pへの分化誘導とRNA解析を行う予定である。つまり、NPMTP-TP-iPSCからNSC転換用薬剤処理でNSCへ転換後、これを非接着性培養皿上でWnt3a、activin A含有分化誘導用培地にて2週間浮遊培養させ、胚様体を形成させる。この過程で、胚様体を構成する細胞では、① β細胞前駆細胞(iTSC-P、あるいはそれに近い細胞)への強制的な分化誘導、②それに伴う残存NSC成分の消失、が期待される。次いで、Kiyokawaらの手法(業績7)に習い、胚様体を接着性培養皿上に播種し、iTSC-Pまで分化させる。iTSC-P colonyは、PDX-1などの膵幹細胞特異的マーカー発現をRT-PCR法にて確認する。一方、抗造腫瘍性確認のため、得られたiTSC-PをIPPCTにてヌードマウス膵内に移植し、移植後1.5もしくは6ヶ月目に剖検し、造腫瘍性の有無を目視で確認する。大型の固形腫(奇形腫)が確認されない場合、造腫瘍活性は認められないと判断される。一方、移植部位には移植細胞と目される小塊にインスリン産生細胞が含まれるかを、組織学的解析およびqRT-PCR、マイクロアレイなどのmRNA解析に付す。
|